孤独が心身の健康に及ぼす影響について

リハビリテーションに関わる専門職であれば、「孤独」は心身の健康に悪影響を及ぼすということを耳にしたことがあるかと思います。

近年では死亡率や認知症の発生率上昇や免疫力低下など、様々なリスクを示す研究結果が多く報告されており、「孤独」が及ぼす影響は非常に深刻なものであるようです。

慢性的な炎症反応の発生も示されており、心疾患・うつ病・糖尿病といった疾患にも繋がり得ることから、 「社会参加」や「他者交流」の機会を積極的に設けることは、対象者の活動機会を増加させることのみではなく、健康状態の維持・改善を考える上でも必要性が高いものと考えることができます。

孤独が人間の健康に与える影響を、2つの実験をもとに考えてみます。

1)1989年 NASAとPioneer Frontier Explorationsが共同で実施した洞窟隔離実験

この実験は、孤独や外界からの刺激が一切ない環境で、人間の生体リズムや心理的影響を調査する目的で行われたものです。

被験者であるステファニア・フォリーニは、アメリカ・ニューメキシコ州の地下約150メートルにある洞窟で131日間生活し、光や音などの外部刺激を完全に断たれた状況に置かれました。

この研究から、孤独や隔離が人間の健康に与える影響について以下の知見が得られました。

まず、フォリーニの体内時計に通常の24時間サイクルから42時間までズレが生じました。

睡眠時間と活動時間のバランスが大きく乱れた上、約4ヵ月の実験であったにも関わらず体感した期間は2か月程度であったとのことです。

加えて、フォリーニは隔離中にビタミンD不足、月経周期の停止、体重の大幅減少を経験しました。

孤独や閉鎖環境により日光を浴びる機会が減少しつつ、栄養管理も困難となり、骨の健康や免疫系に影響が生じた可能性があります。

2)1950年代 カナダのマギル大学にて心理学者ドナルド・ヘッブが主導した感覚遮断実験

この実験は、人間が外部刺激を完全に遮断された環境でどのような変化を経験するのかを調べるものでした。

被験者は暗いゴーグルや耳栓を装着し、触覚刺激を最小化する装具を付けて個室で過ごしましが、ほとんどの被験者は数時間から1日で耐えられなくなり、時間感覚を失って不安や幻覚を経験しました。

さらに、思考力や集中力が大幅に低下し、認知機能に深刻な障害が生じたことが確認されました。

この実験は、外部刺激が人間の正常な心理状態と認知機能の維持に欠かせないことを示しています。

引きこもりや孤立による外部との交流や適度な刺激の無い状況では、健康状態・心身機能が急速に悪化するリスクが生じます。

そのため、家族や地域社会、専門職等の力で対象者が孤立しないよう支援することや、対象者本人に対して『社会参加・他者交流の重要性』を教育することも重要であると考えます。

投稿者
浅田 健吾先生
株式会社colors of life 訪問看護ステーション彩

平成21年に関西医療技術専門学校を卒業し、作業療法士の免許取得する。
回復期・維持期の病院勤務を経て、令和元年より株式会社colors of life 訪問看護ステーション彩での勤務を開始する。
在宅におけるリハビリテーション業務に従事しながら、学会発表や同職種連携についての研究等も積極的に行っている。
大阪府作業療法士会では、地域局 中河内ブロック長や地域包括ケア委員を担当しており、東大阪市PT.OT.ST連絡協議会の理事も務めている。
平成30年からは、大阪府某市における自立支援型地域ケア会議に助言者として参加している。

 

関連記事