在宅療養患者における下腹部膨満のリスクとリハビリ職種の視点

在宅療養患者を支援する中で、急に下腹部の張りを訴える場面に遭遇することがある。

これは単なる便秘や一時的な不快感にとどまらず、緊急性を伴う病態が隠れている場合もあるため、リハビリ職種としても適切な観察と判断が求められる。

以下では、考えられる原因と対応の視点を整理する。

1.消化管に関連する要因

在宅療養患者で最も多く遭遇するのは便秘である。

活動量の低下や食物繊維・水分摂取不足、薬剤(特にオピオイドや抗コリン薬)の影響により腸蠕動が低下し、腸内にガスや便がたまって腹部膨満をきたす。

また、下痢と便秘が交互に出現する便秘型過敏性腸症候群のようなケースも存在する。

さらに、腸閉塞やイレウスといった外科的対応を要する病態もあり、吐き気、嘔吐、便やガスの排出停止を伴う場合は特に注意が必要である。

2.尿路に関連する要因

下腹部の張りは膀胱の拡張によることも多い。前立腺肥大症や神経因性膀胱などによる尿閉では、下腹部に膨満感と痛みを伴うことがある。

リハビリ職種は直接的な処置を行うことはできないが、トイレ動作の頻度や排尿の有無を観察し、異常があれば速やかに医師や看護師へ報告する必要がある。

尿閉は急性腎不全や感染症のリスクにつながるため、軽視すべきでない。


3.腹水や循環器系との関連

肝硬変や心不全などによる腹水貯留も下腹部膨満の原因となる。

在宅療養患者の中には慢性的な疾患管理を行っている方も多く、体重増加や下肢浮腫とあわせて観察することが重要である。

急激な腹部膨満は循環動態の悪化を示す可能性があるため、訪問時に体重変動や呼吸状態も併せて確認する必要がある。

4.リハビリ職種の観察と対応の役割

リハビリ職種は診断や処置を行う立場ではないが、日常生活動作の観察を通じて異常の早期発見に関わることができる。

例えば、着替えや移乗動作時に腹部の張りを訴える、食欲低下や活動性低下が見られる、トイレでの排泄行動に変化があるといった細かなサインを拾い上げることが重要である。

これらを整理し、医療チームに適切に伝えることが、患者の安全につながる。

5.まとめ

在宅療養患者の下腹部膨満は、便秘など日常的に見られるものから、尿閉腸閉塞腹水貯留といった緊急性を要するものまで幅広い病態が考えられる。

リハビリ職種は医療判断を行うわけではないが、生活動作の中で得られる情報をもとに異常の早期発見と報告を担うことができる。

単なる不快感として見過ごさず、変化の背景を意識して観察する姿勢が求められる。

投稿者
高木 綾一

株式会社WorkShift 代表取締役
国家資格キャリアコンサルタント
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
呼吸療法認定士
修士(学術/MA・経営管理学/MBA)
関西医療大学保健医療学部 客員准教授

医療・介護分野の現場経験とマネジメントの専門性を活かし、リハビリテーション部門や多職種連携に関するコンサルティングを全国で展開している。

医療機関や介護事業所の立ち上げ支援、教育体制の構築、組織マネジメント支援など、実践的かつ現場に根ざした支援を強みとする。

セミナー講師としても多数登壇し、現場の課題解決につながる知見の共有を行っている。

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