なぜ現場が採用に関わるべきか
近年、医療・介護現場では深刻な人材不足が続いている。
看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、介護職いずれも有効求人倍率は高止まりし、採用難は構造的課題となっている。
多くの組織で採用活動は人事部門が中心となって進められるが、果たしてそれだけで十分であろうか。
結論から言えば、採用には現場の専門職自身が積極的に関与すべきである。

採用のミスマッチが組織に与える影響
人材不足の中で「誰でもよいから採用する」という姿勢がしばしば見受けられる。
しかし、その結果として定着率が低下し、早期離職や職場の混乱を招くことが少なくない。
特にリハビリ職種や介護職はチーム医療・ケアの一員として機能するため、現場文化や専門職間の協働姿勢に適合しない人材は組織全体のパフォーマンスを下げるリスクがある。
採用の質が、臨床成果や利用者満足度に直結する点を見過ごしてはならない。
現場が関わる採用の効果
たとえばある回復期リハビリテーション病棟では、従来は人事部が面接を一手に担っていた。
しかし、離職率が高止まりしていたため、2023年以降は主任PTやベテラン看護師が面接に同席し、候補者と実際の現場を見学しながら対話するプロセスを導入した。
その結果、候補者の理解度が高まり、入職後のギャップが減少。離職率は2年で20%から10%へと改善した。
また、介護事業所では「現場スタッフが求職者に仕事のやりがいと厳しさを率直に伝える座談会」を実施した。
これにより、入職前に現実を知った人材は入職後も粘り強く働く傾向がみられた。
採用における「現場参画型」の潮流
厚生労働省も「職場定着支援」を政策の柱に据え、離職防止策を推進している。
特に介護分野では「介護人材確保対策事業」において、現場職員による職場体験やオープンハウス型の採用説明会を推奨している。
これは単なる人材獲得にとどまらず、組織文化を共有できる人材を選ぶ仕組みとして注目されている。
リハビリ部門や看護部門でも、今後は採用活動に現場リーダーを関与させる流れが加速するであろう。
明日からできる一歩
読者が明日から取り組める工夫としては、「面接に現場スタッフ1名を必ず同席させる」ことを提案する。
短時間でも現場目線の質問を投げかけることで、候補者の本音を引き出せる。
例えば「患者さんや利用者との関わりで大切にしていることは?」と尋ねるだけでも、その人の価値観や実践姿勢を把握できる。
また、採用説明会に現場スタッフの体験談を織り交ぜることで、候補者に具体的なキャリアイメージを与えることも可能である。
採用は現場文化を未来につなぐ営み
採用とは単なる人数の補充ではなく、組織の未来を形づくる営みである。
だからこそ、現場で働く専門職自身が積極的に関わる必要がある。
現場のリアリティを伝え、価値観を共有できる仲間を迎え入れることこそが、持続可能な医療・介護組織を築く第一歩である。
投稿者
高木綾一

株式会社WorkShift 代表取締役
国家資格キャリアコンサルタント
リハビリテーション部門コンサルタント
医療・介護コンサルタント
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
呼吸療法認定士
修士(学術・経営管理学)
関西医療大学保健医療学部 客員准教授
