アルツハイマー型認知症への段階別アプローチとリハビリテーション職の役割

高齢化社会が進む中で、認知症を呈する方は今後さらに増加することが予測されており、当事者ご本人やご家族の負担は深刻な社会問題となっています。

そうした中、認知症基本法が策定・施行されたり、介護報酬制度において介護職員への認知症関連研修が重視されるなど、認知症対策は国策として推し進められています。

リハビリテーション専門職には、その認知症の方に必要な進行防止策や対応方法の具体的な提案が求められています。

医療・介護の現場でも、MCI(軽度認知障害)から認知症の方に対応する場面は少なくありません。

今回は、認知症全体の約60~70%を占め、最も多いタイプとされるアルツハイマー型認知症の方への対応例についてご説明します。

軽度のアルツハイマー型認知症

症状には、時間の見当識障害、記憶機能の低下、組織化・計画・問題解決などの高次認知機能の低下があります。

この段階では言語機能が維持されているため、次のような代償方法が有効です。

  • 記憶機能の低下:メモを利用して忘れやすいことを記録し、記憶を補う。

  • 時間の見当識障害:デジタル時計やカレンダーを使い、現在の日時や時間を確認できるようにする。

  • 高次認知機能障害:行動の順番や手順を文字で書き出し、視覚的に確認しながら実行できるようにする。

中等度のアルツハイマー型認知症

症状には、場所の見当識機能低下と失行症状(複雑な運動の順序立てが困難になる障害)があります。

対応方法の例は以下の通りです。

  • 場所の見当識機能低下:長期記憶、とくにエピソード記憶が残っている場合には、散歩など習慣化した場所を繰り返し歩くことで記憶を補助する。また、言語機能がある程度残っている場合には、ナビゲーションシステムを用いて道案内を補助する。

  • 失行症状:服を着る際の工程を写真で示す、食事の手順を道具の配置で示すなど、視覚的なヒントを活用する。さらに環境の配置を工夫することで動作の順番を思い出しやすくする。

重度のアルツハイマー型認知症

症状には、人物に対する見当識機能の低下、精神運動統制機能の低下、言語機能障害があります。対応方法の例は以下の通りです。

  • 人物に対する見当識機能の低下:重要な人物の写真や名前を提示するなど、視覚情報を活用して補う。

  • 精神運動統制機能の低下:立ち座りや歩行が困難になるが運動機能は残っていることが多いため、掛け声やジェスチャーを用いて動作を促す。安全に行える動作方法に変更し、環境を整備することが必要。

  • 言語機能障害:ジェスチャーや道具を使って伝達を図る。例えば「入浴」を理解してもらう際に風呂桶やタオルを見せるなど、非言語的な方法でコミュニケーションを図る。

これらの工夫は、当事者やご家族が少しでも安心できる環境作りや負担の軽減につながる具体的な提案の一助となります。

参考:日本老年医学会雑誌 59巻1号(2022:1)
「認知症リハビリテーションの現在 ‐ICFに基づいた評価と支援‐」村井千賀

投稿者
浅田 健吾先生
株式会社colors of life 訪問看護ステーション彩

平成21年に関西医療技術専門学校を卒業し、作業療法士の免許取得する。
回復期・維持期の病院勤務を経て、令和元年より株式会社colors of life 訪問看護ステーション彩での勤務を開始する。
在宅におけるリハビリテーション業務に従事しながら、学会発表や同職種連携についての研究等も積極的に行っている。
大阪府作業療法士会では、地域局 中河内ブロック長や地域包括ケア委員を担当しており、東大阪市PT.OT.ST連絡協議会の理事も務めている。
平成30年からは、大阪府某市における自立支援型地域ケア会議に助言者として参加している。

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