通所介護・通所リハビリの課題と展望

通所介護(デイサービス)や通所リハビリテーション(デイケア)は、要介護高齢者の在宅生活を支える中核的なサービスである。

しかし、現場にはいくつかの重要な課題が横たわっている。

まず、「目的や成果が曖昧なまま継続されているケースが多い」という現実がある。

本来、個別機能訓練加算やADL維持等加算といった制度は、利用者一人ひとりの目標達成に向けた支援を促すものである。

しかし、実際には形式的な計画に留まり、制度の本来の趣旨が活かされきれていない場面も少なくない。

「漫然と通う場」になってしまっている利用者も散見される。

次に、「活動や参加という生活視点の具体的な目標設定が不十分である」という問題がある(図1)。

図1 具体的な目標が設定されていない利用者は多い

ICF(国際生活機能分類)の観点を取り入れた目標設定が浸透すれば、リハビリの成果は単なる身体機能改善に留まらず、社会参加や生活の質向上へと広がるはずである。

しかし、心身機能だけに着目した画一的支援が依然として主流であり、「生活を再構築するリハビリ」という本質に届いていない現状がある。

また、「在宅生活を支えるための生活環境や家事動作の評価が不十分である」という課題も顕在化している(図2)。

多くの事業所では通所サービス内での動作や訓練に焦点が当たりがちであり、実際の住環境や日常生活場面へのアプローチは後回しにされやすい。

「訪問アセスメントの不足」は、在宅生活に即した具体的支援の障壁となっている。

図2  身体機能の評価が生活環境より優先されることが多い

さらに、「アウトカム評価の仕組みが脆弱で、サービスの効果が見えにくい」という構造的課題がある。

科学的介護情報システム(LIFE)の活用は進みつつあるが、現場レベルでのデータ活用は道半ばであり、客観的な成果指標が蓄積されにくい状況が続く。

「見えない成果」は職員のモチベーションや利用者家族の満足度にも影響を与えかねない。

そもそも、心身機能の改善だけでは在宅生活の安定には直結しない。

「同じ要介護度であっても、利用者本人の性格・生活環境・家族構成により支援の内容や優先順位は大きく変わる」。

例えば「独居か同居か」「家族がどれだけ介護に関わるか」「住宅の段差やトイレ形状の違い」など、生活全体を把握する視点が不可欠となる。

「利用者本人が何を大切にして生きているのか」という価値観の理解こそ、支援方針を決める出発点である。

これからの通所介護・通所リハビリには、「生活の再設計を支援する多職種連携」「家族支援を含めた包括的アセスメント」「科学的根拠に基づく評価体制の整備」が求められる。

制度の枠を超えて、現場の創意工夫と専門職の専門性が試される時代が到来している。

「単なる通所」から「生活支援拠点」への進化が、これからの介護・リハビリサービスの大きなテーマとなるだろう。

投稿者
高木 綾一

株式会社WorkShift 代表取締役
国家資格キャリアコンサルタント
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
呼吸療法認定士
修士(学術/MA・経営管理学/MBA)
関西医療大学保健医療学部 客員准教授

医療・介護分野の現場経験とマネジメントの専門性を活かし、リハビリテーション部門や多職種連携に関するコンサルティングを全国で展開している。

医療機関や介護事業所の立ち上げ支援、教育体制の構築、組織マネジメント支援など、実践的かつ現場に根ざした支援を強みとする。

セミナー講師としても多数登壇し、現場の課題解決につながる知見の共有を行っている。

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