人材育成が上手く行かない介護事業所の特徴

介護事業所における人材育成の重要性は言うまでもない。

にもかかわらず、多くの現場で育成が機能せず、慢性的な人手不足や離職率の高さに悩まされている。

その根本には、いくつかの共通した特徴が存在する。

まず最も根本的な問題は、経営理念が曖昧または現場に浸透していないことである。

理念は組織の方向性を定める羅針盤であり、職員がその意義を理解し、自らの仕事と結びつけることで初めて、主体的な行動や成長が促される。

ところが理念が形骸化していたり、経営層すら意識していない場合、育成は単なる作業の指導に終始し、本質的な人づくりにはつながらない。

次に、人材採用戦略の不備も大きな要因である。

とりあえず人手が足りないから誰でもよいという採用を続けると、職場の風土と合わない人材が流入し、定着しない。

結果的に、教育に時間と労力をかけたにもかかわらず、すぐに辞めてしまうという悪循環が生じる。

採用は組織文化に合致するかどうかを重視し、「誰でも取らない」という姿勢こそが、長期的な育成効率を高める鍵となる。

また、育成においてテクノロジーの活用が今後ますます重要になる。

動画マニュアルやオンライン研修の導入により、教育の標準化や反復学習が可能となり、現場負担の軽減と質の均一化を図れる。

しかし、旧来のやり方に固執し、新しいツールの導入を敬遠している事業所では、若手人材とのギャップが広がり、モチベーションの低下につながる危険性がある。

最終的には、経営者や管理者の人に対する考え方が育成の成否を分ける。

人を単なる労働力として扱うのか、それとも可能性を持つ存在として育てようとするのか。

この姿勢の違いは、指導の質にも、評価の仕方にも、接し方にも表れる。

理念があっても、採用方針が明確でも、テクノロジーを導入していても、人を大切にするという視点が欠けていては、本当の意味での人材育成は成り立たない。

人が育つ介護事業所は、例外なく組織としての軸がぶれていない。

理念に根ざした文化をもち、採用にもこだわり、育成に工夫を凝らし、そして何より人を尊重する姿勢を持っている。

人材育成の壁を乗り越えるには、まず経営そのものを見直すことが求められている。

筆者
高木綾一

理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
三学会合同呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
国家資格キャリアコンサルタント
株式会社Work Shift代表取締役
関西医療大学 保健医療学部 客員准教授

医療・介護分野の経営戦略や人材育成に精通し、年間100回以上の講演を実施。
医療機関や介護事業所の経営支援を通じて、組織の成長と発展をサポートする。
著書には 「リハビリ職種のキャリア・デザイン」「リハビリ職種のマネジメント」 があり、リハビリ職種のキャリア形成やマネジメントの実践的な知識を提供している。
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