リハビリテーション科で働く中で、上司との意見の相違や方針の違いに直面することは少なくない。
特に現場で臨機応変な対応を求められる理学療法士・作業療法士・言語聴覚士にとって、臨床感覚や患者対応へのこだわりが強くなる分、管理職との考え方の違いが摩擦を生みやすい。
このような状況で求められるのが「フォロワーシップ」である。
フォロワーシップとは、上司に従うだけの受動的な姿勢ではなく、自ら考え、上司を支えながらも組織の目的達成に貢献する主体的なフォロワーの在り方である。
まず重要なのは、上司との意見の違いを「正しさの争い」にしないことだ。
たとえ自分の意見が理にかなっていたとしても、それを真っ向から否定的にぶつければ、相手は「攻撃された」と感じ、防衛的な態度を取る。
これでは本来の目的である「より良い患者支援」から外れてしまう。
そのために必要なのは、まず「相手の立場を理解すること」だ。
管理職には管理職の立場があり、現場を守るスタッフとは異なる視点や制約がある。
人員配置、経営的判断、多職種連携の調整など、現場には見えにくいタスクに追われている可能性もある。
こうした背景に目を向けることで、上司の言動に対する理解が進む。
次に、「共通の目的に立ち返る」ことが重要だ。
感情ではなく、「この患者さんの在宅支援をどう成功させるか」「チーム全体の力をどう高めるか」といった共通の目標にフォーカスすれば、対話は建設的になる。
「この方針だと自立支援が難しくなるかもしれません。別のアプローチをご一緒に考えさせていただけませんか」というように、敬意を払いながら提案する姿勢が鍵となる。
また、フォロワーシップの発揮には「信頼貯金」も欠かせない。
日常的に誠実な行動を積み重ね、普段から上司との信頼関係を築いておくことで、意見の相違が起きたときにも耳を傾けてもらえる土台ができる。
ぶつかること自体が悪いわけではない。
むしろ現場に熱意がある証拠であり、改善への起点となる。
ただし、そこでフォロワーとしての品格と戦略を失わないことが、組織を良い方向に導くための鍵である。
リハビリテーションはチーム医療であり、組織との協働が欠かせない。
上司とぶつかるときこそ、フォロワーシップの真価が問われる場面である。
筆者
高木綾一

理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
三学会合同呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
国家資格キャリアコンサルタント
株式会社Work Shift代表取締役
関西医療大学 保健医療学部 客員准教授
医療・介護分野の経営戦略や人材育成に精通し、年間100回以上の講演を実施。
医療機関や介護事業所の経営支援を通じて、組織の成長と発展をサポートする。
著書には 「リハビリ職種のキャリア・デザイン」 や 「リハビリ職種のマネジメント」 があり、リハビリ職種のキャリア形成やマネジメントの実践的な知識を提供している。
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