高齢者の方々に対してどのような運動をするべきなの?

私は普段高齢者の方々を対象にリハビリをしているが、高齢者の方々では既往歴や合併症が多く、問題点が1つに絞られることもほぼなく、症状も多岐にわたる場合もある。

また、高齢者の方々はどうしても若年者と比べると活動量は低くなってしまい、リハビリテーションの対象となる方では尚更その傾向が強くなる。

活動量が低いと慢性疼痛になるリスクや転倒リスクなども高くなるため、なるべく活動量を高くするために「運動」が重要にとなることはリハビリテーション関連職種からすると周知の事実かと思う。

しかしそこで問題となるのが、高齢者に対してどんな運動をするのがベストなのか?という点である。

もちろん、各々の症状や問題点によって異なるが、臨床の現場を見てみると臥位でSLRやキッキング、座位で腿上げや膝伸展などの運動をしている場面を多く見かける。

これが本当に正解なのかどうかについて一つの論文から今回は考えてみたいと思う。

Marzoらは高齢者を対象にファンクショナルトレーニングとレジスタンストレーニングで2群間比較をしたところ、どちらも体幹屈筋、伸筋の筋力と持久力を向上させたと報告している。¹)

ただ、ファンクショナルトレーニングでは屈筋・伸筋の筋力、持久力、筋力発揮率(RFD)の全てにおいてレジスタンストレーニングより上回る効果が得られたとも述べている。

レジスタンストレーニングの内容としては、主にマシントレーニングがメインで、スクワット、レッグカール、ベンチプレス、プルダウンなど。

ファンクショナルトレーニングの内容としては、ADL上のニーズに合わせた内容となっており、段差昇降、ステップ、デッドリフト、ゴムバンドを用いた上肢伸筋ex、プランク、骨盤挙上など。

レジスタンストレーニングが筋肉の選択的な運動に焦点が当たっているのに対し、ファンクショナルトレーニングは全身を使って運動することに焦点が当たっている。

ただ、個人的にはここで選択的なトレーニングよりファンクショナルなトレーニングをしたらいいんだとなるのではなく、臨床的な考え方としては、レジスタンス→ファンクショナルの流れがポイントになると思っている。

選択的な運動が不十分なのにも関わらず、いきなりファンクショナルな運動を要求しても難易度は高い。

運動療法の原則としても、難易度の低い→高いという順序である。

例えば、脳卒中による運動麻痺で歩行時に股関節伸展が起こりにくく、反張膝が出現してしまう場合。

股関節伸筋の働きが必要なのは分かっていますが、ここでステップ練習や歩行練習をひたすらするのは患者さんにとっては難易度の高い練習で、かえって筋緊張を高めたり代償動作を強めてしまう恐れがある。

その前にまずは、臥位でブリッジ運動で臀筋群の働きを促す、腹臥位や立位で肛門を締めるように臀筋群の収縮を促すといった選択的な運動が必要となる

その上でファンクショナルな運動として、ステップや歩行練習を進めていくことが必要だと考えている。

筋肉1つ1つの働きは運動の中の1つの要素に過ぎない。

運動という動作を行うには、それを構成する要素をそれぞれ働かせる必要があるということを考えて運動療法を指導するべきだと考えている。

参考文献)
1.Marzo E. Da Silva-Grigoletto et al : Functional Training Induces Greater Variety and Magnitude of Training Improvements than Traditional Resistance Training in Elderly Women. J Sports Sci Med. 2019;18(4):789-797.

投稿者
堀田一希

・理学療法士

理学療法士免許取得後、関西の整形外科リハビリテーションクリニックへ勤務し、その後介護分野でのリハビリテーションに興味を持ち、宮﨑県のデイサービスに転職する。
「介護施設をアミューズメントパークにする」というビジョンを掲げている介護施設にて、日々、効果あるリハビリテーションをいかに楽しく、利用者が能動的に行っていただけるかを考えながら臨床を行っている。
また、転倒予防に関しても興味があり、私自身臨床において身体機能だけでなく、認知機能、精神機能についてもアプローチを行う必要が大いにあると考えている。そのために他職種との連携を図りながら転倒のリスクを限りなく減らせるよう日々臨床に取り組んでいる。

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