世の中で働く人すべてが「起業」を望んでいるわけではない。
むしろ、日本において起業はまだまだ一般的とは言えず、「起業したい」と考える人はマイノリティに属する。
実際、国際的に見ても日本の起業率は極めて低い水準にとどまっている。
なぜ日本の起業率は低いのか。
その背景には、出る杭は叩かれる文化、滅私奉公を美徳とする社風、金儲けを悪とする風潮、お金に関する教育の不足、正社員という既得権益の強さなど、数多くの要因が指摘されている。
こうした要素が複雑に絡み合い、日本は「起業しにくい国」であることは明白である。
それでも、起業に挑む人は存在する。
そして彼らを突き動かすものこそ、エドガー・シャインが提唱したキャリア・アンカーの一つ、「起業家的独創性」である。
キャリア・アンカーとは「仕事をするうえでどうしても譲れない価値観」を指す。
起業家的独創性を持つ人は、独立・起業を好み、新しいサービスや事業を創出し普及させることに強い関心を持つ。
単なる自立心や現状への不満からではなく、「何かを生み出すこと」自体に価値を見いだしているのだ。
つまり、「お金を稼ぎたい」「今の職場が不満だから」「有名になりたい」といった動機では、起業を継続するモチベーションを保つことは難しい。
近年では、業務や待遇への不満から「起業」という言葉を軽々しく使う理学療法士・作業療法士・言語聴覚士も少なくない。
しかし、起業家的独創性のキャリア・アンカーを持ち合わせていなければ、その思いは一過性となり、起業自体も成功しにくい。
そもそも日本は、起業に対する視線が厳しい国である。
その中で挑むのなら、動機は安直なものではあってはならない。
起業を考える際には、ぜひ自らに問いかけてほしい。
「起業でなければ、自分の価値観は満たされないのか?」と。
その問いに明確に「YES」と答えられる人だけが、起業に挑む覚悟を持つべきである。
執筆者
高木綾一

株式会社WorkShift 代表取締役
国家資格キャリアコンサルタント
リハビリテーション部門コンサルタント
医療・介護コンサルタント
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
呼吸療法認定士
修士(学術)(経営管理学)
関西医療大学保健医療学部 客員准教授
