PT・OT・STが知っておきたいライフロールというキャリアの考え方

米国の学者ドナルド・E・スーパーが提唱したキャリア理論は、キャリアを単なる職業選択ではなく、人生全体の中で捉える考え方として知られている。

古典的な理論ではあるが、現代のように働き方や生き方が多様化した時代においても、なお高い普遍性を持つ理論である。

特に、PT・OT・STのように専門職として長く成長し続けることが求められる職種においては、この視点は非常に重要である。

スーパーの理論は、大きく「ライフステージ」と「ライフロール」の二つで捉えることができる。

中でもライフロールとは、人は人生の各時期において、さまざまな役割を担いながら生きているという考え方である。

たとえば、子ども、学生、市民、労働者、配偶者、親、余暇を楽しむ人といった役割があり、その時々の価値観や興味、関心によって、どの役割を重視するかが変化していく。

リハビリ職種に当てはめると、この考え方は極めて理解しやすい。

PT・OT・STとして働き始めた時期は、まず専門職として一人前になりたいという思いが強くなり、労働者としての役割に大きな比重が置かれやすい。

臨床力を高めたい、先輩に追いつきたい、患者に信頼されたいという思いから、仕事中心の生活になりやすい時期でもある。

一方で、資格取得後も研修会や大学院、学会活動などに取り組む人は、労働者であると同時に学生としての役割も担っている。

さらに年齢を重ねるにつれて、配偶者、親、地域の一員としての役割、そして高齢になった親を支える子どもとしての役割も加わってくる。

つまり、キャリアとは職場の中だけで完結するものではなく、人生全体の役割の重なりの中で形づくられていくものである。

だからこそ、各ライフステージにおいて、今の自分がどの役割を大切にしたいのかを考えることが重要である。

仕事に全力を注ぐ時期もあれば、家庭や健康、学び直しに重きを置く時期もある。

その変化を否定せず、自分の価値観に合った働き方や職場を選ぶことが、長く充実して働き続けるための鍵となる。

リハビリ職種は、人の人生を支える仕事である。

その一方で、自分自身の人生における役割にも目を向ける必要がある。

自分は何を大切にしたいのか、今どの役割に重点を置くべきかを見つめ直すことが、理想のキャリアと人生に近づく第一歩である。

キャリアデザインを体系的に学びたい方 → セミナー一覧はこちら
筆者
高木綾一

理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
三学会合同呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
国家資格キャリアコンサルタント
株式会社Work Shift代表取締役
関西医療大学 保健医療学部 客員准教授

医療・介護分野の経営戦略や人材育成に精通し、年間100回以上の講演を実施。
医療機関や介護事業所の経営支援を通じて、組織の成長と発展をサポートする。
著書には 「リハビリ職種のキャリア・デザイン」 や 「リハビリ職種のマネジメント」 があり、リハビリ職種のキャリア形成やマネジメントの実践的な知識を提供している。
経営相談・セミナー依頼はお気軽にお問い合わせください。

関連記事