多職種連携の前に同職種連携:セラピストの標準化なき連携は機能しない

多職種連携が叫ばれて久しい。

在院日数短縮、在宅復帰推進、廃用性症候群の予防などを単独職種で完結させることは難しく、利用者・家族を含めた多職種間での協働が不可欠である。

そのため、全国津々浦々で「多職種連携に関するセミナー」が開催されており、多職種連携は医療・介護分野で最もホットなトピックスと言っても過言ではないだろう。

しかし、もっと根深い問題がある。

そもそも、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士は「同職種連携」さえもできていないのだ(下図)。


(無断転載禁止)

リハビリテーションに対する価値観や考え方の個人差
評価や治療の技術の個人差
そして、同職種内のリハビリテーション技術の標準化に必要なマネジメントの欠如

これらが起因となり、同職種連携すらままならないのである。

理論的に整理すれば、これは「ばらつき(Variation)」が統制されていない状態だ。

標準化とは、誰が担当しても一定の品質を担保するために、プロセスと判断基準を揃え、アウトカムを安定させるマネジメント技術である。

逆に言えば、標準化がない組織は、個々の能力差・経験差がそのままサービス品質の差となって表出する。

特に、365日リハビリや訪問リハビリが普及してから、同職種内連携の不備はより大きな問題となっている。

なぜなら、勤務シフトの多様化や担当交代の頻度増加によって、個人の力量に依存した運用(属人化)が露呈しやすくなったからだ。

これは組織論で言えば、暗黙知に依存している状態であり、知識が共有されず再現性が担保されない。

結果として、チームとしての一貫性が失われる。

同職種であっても担当者が変わるたびに、リハビリテーションの内容が変わる、予後予測も変わる、そして、接遇も変わる・・・

これでは利用者が満足する訳がない。

サービス品質の評価理論で言えば、利用者が求めているのは「高度な専門性」だけではなく、「一貫性」と「予測可能性」である。

説明された目標や見通しが担当者交代で揺らぐことは、信頼の毀損に直結する。

つまり、同職種連携の不備は、技術の問題であると同時に、信頼形成の問題でもある。

セラピストは医師や看護師と比較して、評価や技術の標準化に乏しい。

背景には、評価指標や治療プロトコルの統一が部署単位で行われにくいこと、教育・監査・フィードバックの仕組みが弱いこと、そして「専門職としての裁量」を理由に標準化が後回しにされやすい構造がある。

だが、裁量と標準化は対立概念ではない。

標準化とは、最低品質を担保した上で、必要な場面で適切に裁量を発揮するための土台である。

だからこそ、マネジメントを機能させてリハビリテーション技術の標準化を図らねばならない。

具体的には、評価項目・記録様式・ゴール設定・介入の優先順位・禁忌判断・接遇の基準などを「共通言語」にし、OJTとOff-JT、ケースレビュー、同行訪問、監査(レビュー)とフィードバックを定期運用することが重要となる。

標準化は資料を作って終わりではなく、運用によって初めて定着する。

ここにマネジメントの役割がある。

多職種連携の前に同職種連携である。

多職種連携は、いわば「組織間・職種間の接続」である。

その接続の前提は、各職種が自職種としての判断と介入の品質を安定させ、チームとして同じ方向を向けていることだ。

同職種内で方針が割れている状態では、他職種と連携しても情報は混線し、結局は利用者不利益となる。

皆さんの職場は同職種連携は出来ているだろうか?

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執筆者
高木 綾一

株式会社WorkShift 代表取締役
国家資格キャリアコンサルタント
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
呼吸療法認定士
修士(学術/MA・経営管理学/MBA)
関西医療大学保健医療学部 客員准教授

医療・介護分野の現場経験とマネジメントの専門性を活かし、リハビリテーション部門や多職種連携に関するコンサルティングを全国で展開している。
在宅領域および整形外科リハビリテーションの臨床に長年取り組み、現場の実態を踏まえた実践的な視点を強みとする。
医療機関や介護事業所の立ち上げ支援、教育体制の構築、組織マネジメント支援など、実践的かつ現場に根ざした支援を得意とする。
また、コンサルティング先に加え、リハビリ職種養成校等でも臨床からマネジメントまで幅広く講義を行い、現場で再現できる形に落とし込んだ知見の提供に力を入れている。
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