評論は一流、実技は三流:現場が信頼しないセラピストの共通点

リハビリテーション医学の進歩は著しい。

20年前では考えられないほど多様なリハビリテーション関連の学会、論文、書籍が存在し、書店のリハビリテーションコーナーには関連書籍が山積みになっている。

また、大学院に進学するセラピストも増え、修士号・博士号を持つセラピストが珍しくない時代になった。

このように学べる環境が充実したことで、理論をよく学び、知識で武装したセラピストも確実に増えている。

その一方で、高齢者は急増し、多疾患併存、フレイル、認知症、低栄養、社会的課題など、複雑な問題を抱える利用者が臨床現場には以前にも増して多い。

結果として、臨床家には「知識」だけでなく、状況に合わせて評価し、瞬時に仮説を立て、手で確かめ、介入を組み立て直すような高い技術が求められる。

ここで問題となるのが、理論武装系セラピストである。

こと患者の評価や治療の話になると、理論的な解説を勢いよく語り、概念や用語で相手を圧倒する。


(無断転載禁止)

しかし、いざハンズオンで評価や治療をしてみると、驚くほど粗い、あるいは危ういレベルであることがある。

このズレが生じる理由は単純で、理論は「言語化された知識」であり、技能は「状況の中で再現できる行動」だからだ。

学習理論でいえば、知識は宣言的知識として獲得できても、臨床技能は手続き記憶として反復とフィードバックを通じてしか定着しにくい。

さらに臨床は、患者の反応・環境・時間制約が絡む実戦環境であり、教科書的な正しさだけでは、狙った効果を出せない。

また、理論武装セラピストは組織内で出世していることも多く、これがまた厄介である。

評論は饒舌。
実技はグダグダ。

この状態で現場の臨床家がリスペクトするはずがない。

なぜなら、臨床の信頼は「説明の上手さ」ではなく、「再現性」と「安全性」と「結果」で積み上がるからだ。

理論が臨床価値になる条件は、理論が現場の意思決定(評価→仮説→介入→再評価)を速く正確にし、患者のアウトカムと安全性を高めることにある。

そこに接続されない理論は、知識ではなく装飾になってしまう。

理論武装が悪いのではない。

リハビリテーションには理論武装は必要だ。

むしろ、理論があるからこそ、症例の違いに応じて介入を調整でき、説明責任を果たし、多職種と共通言語で連携できる。

しかし、ハンズオンで何もできないとなると、それは臨床家ではなく、リハビリテーション評論家である。

臨床家とは、理論を「使える形」に変換し、手で確かめ、患者の反応で修正し、再現可能な支援として提供できる人だ。

評論家とは、理論を「語れる形」のまま保持し、現場の不確実性の中で実装できない人だ。

皆さんの周りにも、リハビリテーション評論家はいないだろうか?

リハビリテーション評論家は、臨床家の反面教師である。

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執筆者
高木 綾一

株式会社WorkShift 代表取締役
国家資格キャリアコンサルタント
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
呼吸療法認定士
修士(学術/MA・経営管理学/MBA)
関西医療大学保健医療学部 客員准教授

医療・介護分野の現場経験とマネジメントの専門性を活かし、リハビリテーション部門や多職種連携に関するコンサルティングを全国で展開している。
在宅領域および整形外科リハビリテーションの臨床に長年取り組み、現場の実態を踏まえた実践的な視点を強みとする。
医療機関や介護事業所の立ち上げ支援、教育体制の構築、組織マネジメント支援など、実践的かつ現場に根ざした支援を得意とする。
また、コンサルティング先に加え、リハビリ職種養成校等でも臨床からマネジメントまで幅広く講義を行い、現場で再現できる形に落とし込んだ知見の提供に力を入れている。
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