リハビリテーションは学術が進んでも現場は良くならない?成果を分ける視点はここ

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士はそれぞれ専門性がある。

そして、近年、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の各領域は学問的発展が著しく、各種療法はより科学的で専門的なものへと変化している。

さらに大学院への進学ブームもあり、高度教育を受けるセラピストが増え、学術的知見に長けた者が臨床現場に増加している。

しかし、学術に長けた者が増えるほど、リハビリテーション現場の実力が一様に向上したのか、という問いに対しては疑問が残る。

学術的能力の向上は重要である一方で、それがそのまま「現場で成果を出す力」と一致するとは限らないからである。

筆者が医療機関や介護事業所をコンサルティングしている中で、問題となるセラピストの特徴の一つとして、「利用者・家族のニーズに対応せず、自身の専門性を押し売りする者」が挙げられる(図)。


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リハビリテーションは心身機能・活動・参加の集合体であり、全人間的復権を目指す営みである。

したがって、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士それぞれの狭い専門性だけでは、利用者の生活課題に十分対応できない場面が必ず生じる。

図で示すようなセラピストは、家族が何を求めているかという文脈を把握しないまま、自分が得意とする領域の介入を優先しやすい。

結果として、利用者・家族が求める成果(生活の変化、安心、意思決定支援など)と、提供される支援内容の間にズレが生まれる。

このタイプのセラピストの厄介な点は、「自分は良質な医療を提供している」と自己評価していることである。

専門性の高さや手技の精度を根拠に正当化しやすく、利用者・家族の納得や生活上の成果という評価軸が抜け落ちても気づきにくい。

また教育現場にも未だに、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士は「治療技術さえ長けていれば生き残れる」と声高に語る学術系セラピストが存在する。

だが、臨床の価値は技術の高度さだけでは決まらない。

価値は、利用者・家族のニーズを起点に、目的を定義し、多職種と連携し、生活の中で再現可能な変化として実装できたかで決まる。

皆さんの職場では専門性の押し売りセラピストはいないだろうか。

「賢い=リハビリテーションができる」ではないことを前提条件として、組織管理・人材育成を行うことが重要である。

専門性の深化と同時に、ニーズ把握、目標共有、成果の定義、説明責任、協働といった臨床の基礎能力を組織として鍛え直す必要がある。

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筆者
高木綾一

理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
三学会合同呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
国家資格キャリアコンサルタント
株式会社Work Shift代表取締役
関西医療大学 保健医療学部 客員准教授

医療・介護分野の経営戦略や人材育成に精通し、年間100回以上の講演を実施。
医療機関や介護事業所の経営支援を通じて、組織の成長と発展をサポートする。
著書には 「リハビリ職種のキャリア・デザイン」 や 「リハビリ職種のマネジメント」 があり、リハビリ職種のキャリア形成やマネジメントの実践的な知識を提供している。
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