多職種連携が機能しない本当の理由 ― 知識非対称性という落とし穴

回復期リハビリテーション病棟における定期カンファレンス、退院前カンファレンス、サービス担当者会議、リハビリテーション会議など、リハビリテーション職種が参加する会議は年々増加している。

それに伴い、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が多職種と直接コミュニケーションを取る機会も飛躍的に増えている。

しかし、その一方で新たな問題も顕在化している。

その代表例が「多職種が何を言っているのかわからない症候群」である(図1)。

図1 多職種が何を言っているのかわからない

当然ながら、職種が異なれば専門用語も異なる。

医師、看護師、薬剤師、管理栄養士、MSW、それぞれが異なる教育背景と専門体系の中で言語を形成している。

会議の場で一つでも理解できない用語が出てくると、そこを起点に思考が停止し、以降の議論が頭に入らなくなるセラピストは少なくない。

その結果、本来は利用者にとって極めて重要な情報――治療方針の変更、内科的リスク、退院後の生活制約など――を十分に理解できず、結果として利用者に不利益をもたらす可能性がある。

特にセラピストにとって弱点になりやすい領域は以下である。

予後予測
内科疾患
栄養状態
褥瘡
薬剤

これらはリハビリテーションの成果を直接左右する要素であるにもかかわらず、養成課程や日常臨床で深く学ぶ機会が限定的であることが多い。

知識が浅いまま会議に臨めば、議論のスピードについていけず、「どんどん辛い状況」に陥る可能性は高い。

理論的に言えば、これは「専門職間の知識非対称性」の問題である。

組織論やチーム医療の理論では、効果的な多職種連携には
①共通言語の形成
②役割理解の明確化
③最低限の相互専門知識の共有
が必要とされる。

つまり、自職種の専門性を深めるだけでは不十分であり、隣接領域の基礎理解を持つことがチーム医療の前提条件なのである。

多職種連携を本気で機能させたいのであれば、感覚や雰囲気に頼るのではなく、体系的に学び直すしかない。

会議で発言できるかどうかは、コミュニケーション能力の問題ではなく、知識構造の問題である。

だからこそ、勉強するほかないのである。

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筆者
高木綾一

理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
三学会合同呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
国家資格キャリアコンサルタント
株式会社Work Shift代表取締役
関西医療大学 保健医療学部 客員准教授

医療・介護分野の経営戦略や人材育成に精通し、年間100回以上の講演を実施。
医療機関や介護事業所の経営支援を通じて、組織の成長と発展をサポートする。
著書には 「リハビリ職種のキャリア・デザイン」 や 「リハビリ職種のマネジメント」 があり、リハビリ職種のキャリア形成やマネジメントの実践的な知識を提供している。
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