リハビリテーションの現場には、知識も技術もあり、若手から慕われているリーダー格のリハビリ職種がいることが多い。
そのため、そのリーダーは若手に良くも悪くも影響を与え、組織にとって油断ならない存在となることがある。
影響力は能力と同じくらい強い資源であり、方向を誤れば組織全体の行動規範や空気を一気に変えてしまうからである。
このようなリーダーは、若手や周囲のリハビリ職種に対してリーダーシップを発揮し、組織や業務の在り方に対して異議を唱えることもある。
まさに現場の代表者として活動するタイプである。
本人は、自分が正しいことをしているという自覚が強く、組織や個人に対して異議を唱える活動を増長させることが多い。
現場の課題を言語化できる人ほど、周囲から支持を得やすく、結果として自分の主張が通る体験を重ねやすい。
これが、さらに発言や介入を強める要因となる。
しかし、ここには重要な視点が抜けている。
リーダーとして優れていても、部下として優れていなければ、組織からの評価は得られないということである。
組織評価は個人の能力だけでなく、組織目標への貢献度と協働の質で決まる。
では、部下として優れているとはどういうことか。
それは、組織の一員としてチームプレイに徹し、組織の方向性を建設的な意見で調整していくことである。
具体的には、上司の意思決定を尊重しつつ、事実・論点・代案を整理して提案し、実行段階では協力して成果が出る形に落とし込む姿勢である。
異議申し立ては否定ではなく、合意形成と改善のための材料として扱われるべきである。
リーダーシップが優れている人の組織に対する異議申し立ては、組織の弱点や上司の欠点を指摘する形になりやすい。
課題を見抜く力があるからこそ、欠点が目につくのである。
しかし、組織の弱点や上司の欠点を指摘するだけでは、それはただのクレーム、文句である。
クレームは問題を可視化するが、解決の設計図を持たない。
加えて、批判だけが続くと周囲には「どうせ変わらない」「対立するのが賢い」という学習が起こり、組織の心理的エネルギーが消耗していく。結果として、改善よりも分断が進みやすい。
優れた部下は、組織の弱点や上司の欠点を補うために、自分にはどのようなことができるかを考え、建設的な意見を述べることができる。
たとえば、代案を提示するだけでなく、実行に必要な手順、関係者、リスク、代替策まで見立て、上司の負担を減らしながら前に進める。
ここまでやって初めて、異議申し立ては「組織への貢献」として評価されるのである。
リーダーとして優れていても、部下として優れていなければ、組織からの高い評価は得られない。
あなたの職場にはいないだろうか。
クレームや文句は得意だが、チームのために行動できない。
リーダーの皮をかぶっているだけのリハビリ職種が。
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執筆者
高木 綾一

株式会社WorkShift 代表取締役
国家資格キャリアコンサルタント
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
呼吸療法認定士
修士(学術/MA・経営管理学/MBA)
関西医療大学保健医療学部 客員准教授
医療・介護分野の現場経験とマネジメントの専門性を活かし、リハビリテーション部門や多職種連携に関するコンサルティングを全国で展開している。
在宅領域および整形外科リハビリテーションの臨床に長年取り組み、現場の実態を踏まえた実践的な視点を強みとする。
医療機関や介護事業所の立ち上げ支援、教育体制の構築、組織マネジメント支援など、実践的かつ現場に根ざした支援を得意とする。
また、コンサルティング先に加え、リハビリ職種養成校等でも臨床からマネジメントまで幅広く講義を行い、現場で再現できる形に落とし込んだ知見の提供に力を入れている。
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