リハビリテーション部門における最大の経営資源がリハビリ職種であることは疑いようがない。
ゆえに、多くの部門が人材育成に力を注いでいる。
しかし、人材育成がうまく回り、成果が積み上がり続けている事例を耳にする機会は多くない。
現場では、人材育成以前に、次のような問題が繰り返し起きている。
3年目から5年目で退職する
職場の規律を乱すリハビリ職種がいる
管理職を希望しない人が多い
臨床能力が低いだけでなくインシデントが多い
人事異動に納得しない
周囲を扇動して組織を乱す
などである。
これらの火消しに追われ、疲弊している管理職は少なくない。
ただし、ここで押さえるべきは、問題の収束や解決が組織力をプラスにする営みではない点である。
これは組織力のマイナスをゼロに戻す作業に過ぎない。
本来、管理職の仕事はゼロを維持することではなく、組織力のプラスをさらにプラスへ伸ばすことである。
言い換えれば、問題社員対応に時間と感情を吸い取られる状態は、管理職の最も高い価値を発揮する機会を奪っている。
では、どうすればよいか。
結論は明快である。
人材に関する問題が極力起きない状態を上流でつくることである。
そして上流とは、育成の手前にある採用の入り口である。
組織論でいえば、採用は単なる人員補充ではない。
採用とは組織文化の再生産であり、候補者と組織の間で交わされる心理的契約の合意形成である。
ここが曖昧なまま入職が決まれば、本人は思っていた仕事と違う、組織は期待していた人物像と違うというズレが生じる。ズレは早期離職や規律違反、対立、扇動といった形で表面化し、結果として育成の資源が浪費される。
つまり、問題の多くは現場の指導力不足ではなく、入口での適合確認が甘いことに起因する構造問題である。
したがって必要なのは、採用段階での徹底した人選である。
組織の理念、ビジョン、業務内容、求める役割、育成方針、評価の考え方、キャリア教育の道筋に対して、完全に納得し、同意できる人材だけを迎え入れる。
そのために、複数回の面接や筆記・実技・ケース試験などを用い、適合度を多面的に見極めることが重要である。
もちろん、人材を厳選する活動には大きなエネルギーが要る。
しかし、そのエネルギーは健全である。
なぜなら、採用に投じるエネルギーは未来への投資であり、手順や判断基準として整えれば、再現性のある仕組みにできるからである。
一方、問題社員対応に費やすエネルギーは、摩耗と消耗を生みやすく、組織の学習を止め、優秀層の離職リスクを高める。
ゆえに、問題社員に振り回される組織は、現場の努力不足ではない。
端的にいえば採用活動の質が悪すぎるのである。
ここで問いを置く。
良い人材を採用するためのエネルギーと、問題社員対応に消えるエネルギーなら、あなたはどちらを選ぶのか。
管理職の仕事をゼロ戻しに消費するのか、それとも入口の整備によって、組織力をプラスに変える仕事へ集中するのか。
答えは、現場の未来を決める選択そのものである。
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執筆者
高木 綾一

株式会社WorkShift 代表取締役
国家資格キャリアコンサルタント
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
呼吸療法認定士
修士(学術/MA・経営管理学/MBA)
関西医療大学保健医療学部 客員准教授
医療・介護分野の現場経験とマネジメントの専門性を活かし、リハビリテーション部門や多職種連携に関するコンサルティングを全国で展開している。
在宅領域および整形外科リハビリテーションの臨床に長年取り組み、現場の実態を踏まえた実践的な視点を強みとする。
医療機関や介護事業所の立ち上げ支援、教育体制の構築、組織マネジメント支援など、実践的かつ現場に根ざした支援を得意とする。
また、コンサルティング先に加え、リハビリ職種養成校等でも臨床からマネジメントまで幅広く講義を行い、現場で再現できる形に落とし込んだ知見の提供に力を入れている。
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