筆者は複数の医療機関でコンサルティングを行っているが、現場の管理職セラピストから「上層部から一日18単位を死守せよと強く求められ、現場が疲弊している」という相談を受けることが少なくない。
多くの医療機関では、セラピストの生産性を「一日18単位」という単一の基準で捉える運用が見られる。
しかし、生産性を単位数だけで評価することは、本当に適切だろうか。
結論から言えば、単位数は生産性を構成する指標の一つではあるが、それだけで生産性を代表させることは難しい。
単位数のみを至上基準にすると、現場は「単位を取ること」自体が目的化しやすくなる。
結果として、患者・利用者にとっての最適なリハビリテーションよりも、数字を満たす行動が優先されるリスクが高まる。
セラピストの仕事の質や成果は、本来もう少し多面的に捉える必要がある。
例えば、
- 1単位あたりの介入効果(機能・活動・参加の改善)
- 在院日数短縮や転帰改善への寄与
- 統合的ケア(栄養・口腔・疼痛・せん妄等)への関与
- 質の高い在宅復帰支援(家屋評価・家族指導・環境調整)
- 多職種連携(カンファレンス、情報共有、合意形成)
- 1日あたりの取得単位数(量の指標)
などが挙げられる。
これらを一定の枠組みで組み合わせて評価して初めて、「生産性」をより妥当に扱える。
単位数のみが強調される部門では、たとえば「軽症者への過剰な関わり」「本来必要な家屋評価やカンファレンスの先送り」「記録や算定の形式が目的化する」といった、リハビリテーションの本質から離れた運用が起こりやすい。
これは個人の問題というより、評価制度の設計が現場行動を規定することによって生じる構造的な問題である。
セラピストの労働生産性の評価は、言い換えればリハビリテーションの質をどう定義し、どう担保するかという議論と切り離せない。
したがって、18単位という数字だけで評価・統制しようとすると、短期的には量が増えても、中長期的には質・倫理・職員定着の面で組織リスクを高める可能性がある。
あなたの職場では、生産性を「単位数」だけに回収していないだろうか。
いま一度、評価指標が現場の行動と患者価値にどう影響しているかを点検したい。
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執筆者
高木 綾一

株式会社WorkShift 代表取締役
国家資格キャリアコンサルタント
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
呼吸療法認定士
修士(学術/MA・経営管理学/MBA)
関西医療大学保健医療学部 客員准教授
医療・介護分野の現場経験とマネジメントの専門性を活かし、リハビリテーション部門や多職種連携に関するコンサルティングを全国で展開している。
在宅領域および整形外科リハビリテーションの臨床に長年取り組み、現場の実態を踏まえた実践的な視点を強みとする。
医療機関や介護事業所の立ち上げ支援、教育体制の構築、組織マネジメント支援など、実践的かつ現場に根ざした支援を得意とする。
また、コンサルティング先に加え、リハビリ職種養成校等でも臨床からマネジメントまで幅広く講義を行い、現場で再現できる形に落とし込んだ知見の提供に力を入れている。
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