訪問リハビリの利用者が増えない。
病棟の稼働率が上がらない。
通所介護への紹介が少ない。
すると経営者は、短絡的にこう指示する。
営業に行ってこい。
しかし、残念ながら営業に行っただけで利用者は増えない。
理由は単純で、営業の効果が極めて限定的だからだ。
営業が単体で生み出せる成果は、多くの場合、事業所の認知度をわずかに上げる程度に留まる。
認知は入口にすぎず、利用や紹介の決定打にはならない。
さらに営業は、時として諸刃の剣になる。
私たち自身、営業担当者から売り込みを受けて不快になった経験があるはずだ。
あの不快感は、説明の巧拙ではなく、受け手が感じ取る構造に由来する。
営業が成立する前提には、信頼がある。
信頼できる人、信頼できる事業所の話は不快ではない。
むしろ、詳しく聞きたいと思う。
一方で、信頼がない状態で売り込みだけが前に出ると、相手は警戒し、拒否反応が起きる。
ここで起きているのは、営業が下手なのではなく、信頼残高が不足している状態で取引を求めているというミスマッチである。
だから順序が逆なのだ。
営業の前に、信頼関係の構築が必要である。
信頼は、突発的な訪問や挨拶回りで獲得できない。
日々のサービス品質と、継続的な情報発信、関係者との誠実なコミュニケーションによって、時間をかけて積み上がっていく。
この地道な蓄積を省略し、営業さえすれば利用者や紹介が増えると考える経営者は、とにかく残念である。
医療や介護は、価格やスペックだけで選ばれる商品ではない。
選ばれる根拠は、安心して任せられるかどうかという信頼にある。
医療・介護サービスは、信頼関係によって機能するソーシャルキャピタルの上に成り立つ。
ソーシャルキャピタルとは、関係性の中に蓄えられた資本であり、信頼がなければ回らない。
だから、結論は明確だ。
営業に行く前に、質の高いサービスを提供し、信頼を蓄積することが最重要である。
営業はその後に初めて、効果を持つ。
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執筆者
高木 綾一

株式会社WorkShift 代表取締役
国家資格キャリアコンサルタント
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
呼吸療法認定士
修士(学術/MA・経営管理学/MBA)
関西医療大学保健医療学部 客員准教授
医療・介護分野の現場経験とマネジメントの専門性を活かし、リハビリテーション部門や多職種連携に関するコンサルティングを全国で展開している。
在宅領域および整形外科リハビリテーションの臨床に長年取り組み、現場の実態を踏まえた実践的な視点を強みとする。
医療機関や介護事業所の立ち上げ支援、教育体制の構築、組織マネジメント支援など、実践的かつ現場に根ざした支援を得意とする。
また、コンサルティング先に加え、リハビリ職種養成校等でも臨床からマネジメントまで幅広く講義を行い、現場で再現できる形に落とし込んだ知見の提供に力を入れている。
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