職場には、上司や会社への不満を「常に」口にしているリハビリ職種がいる。
「上司は何も分かっていない」
「経営者はお金のことしか考えていない」
「俺の技術が分からない上司はダメだ」
言わせたら一流である。
批判の言語化だけは巧みで、周囲の共感も集める。
ところが、その人が本当に求めているのは改善ではなく、「批判による居場所」だったりする。
さらに厄介なのは、後輩に対して自己顕示欲が強く、「自分が一番優秀だ」と匂わせる態度を取りやすいことだ。
高圧的に後輩を支配し、後輩が気を遣っておだてる。
その反応で本人は精神的な満足を得る。
この構図が成立すると、職場は静かに壊れていく。
なぜ「不満を言うのに辞めない」のか
心理学で見る3つの仕組み
このタイプは外から見ると矛盾して見える。
「そんなに嫌なら辞めればいいのに、なぜ居座るのか?」
ここに心理学的なヒントがある。
1)オペラント条件づけ:不満が「報酬」になっている
不満を言う → 誰かが同調する/持ち上げる → 気分が良くなる。
この「快」のフィードバックが繰り返されると、不満は改善の手段ではなく、自己価値を保つ習慣になる。
つまり不満は「癖」ではなく、強化された行動である。
2)自己奉仕バイアス:うまくいかない原因を外部に置く
人は自尊心を守るために、成功は「自分の実力」、失敗は「環境のせい」と解釈しやすい。
これを自己奉仕バイアスという。
「俺の技術が理解されないのが問題だ」という語りは、実は「自分の課題」を直視しないための防衛にもなり得る。
3)認知的不協和:辞めない選択を正当化する
「ここはダメだ」と言いながら居続けると、心の中に矛盾が生まれる。
そこで人は矛盾を解消するために「上が悪い」「経営者が悪い」と語りを強化し、居続けることを正当化する。
結果として「不満の語り」だけが過激になる。
後輩が持ち上げる理由
集団心理が「職場の英雄」を作る
後輩側も、好きでおだてているとは限らない。ここにも心理が働く。
- 権威への服従:強い人に逆らうと不利益があると感じる
- 同調圧力:周囲も合わせていると、合わせない方が浮く
- 心理的安全性の欠如:反論=攻撃される環境だと沈黙が合理的になる
こうして「不満を言う英雄」×「おだてる部下」という共依存的な関係が生まれる。
本人は「支配と承認」で満たされ、職場に居続ける。
その人は出世しない
組織も弱る
会社や上司への不満が強い人は、昇進してもせいぜい中間管理職が限界になりやすい。
管理職に求められるのは、他責ではなく課題設定、批判ではなく合意形成、正しさではなく成果の設計だからである。
これまではリハビリ職種の希少性で「生き残れた」かもしれない。
しかし今後、供給過多が進むほど、組織は「一緒に成果を出せる人」をシビアに選ぶ。
社会性が乏しく、キャリアデザインも描けず、他責で居場所を作る人は、いずれレッドカードを受ける。
「雇い続ける組織」も危険信号である
このタイプを放置し続けている医療機関・介護事業所は、マネジメントが破綻している可能性が高い。
- 問題行動が評価されてしまっている
- 指導・配置・評価が機能していない
- 管理者が衝突を避けている(職務放棄に近い)
結果として、まともな人ほど疲弊し離職し、組織の質が下がる。
職場の空気は「静かに腐る」のだ。
あなたの周りにいないか?
職場の不満を言いまくっているのに辞めないリハビリ職種がもし周囲にいるなら、それは職場が危険水域に入っているサインである。
まだ評価できるのは、不満があるなら退職なり上司への上申なり「行動で状況を変えようとする人」である。
改善に向けた提案や交渉ができる人は、組織にとって価値がある。
一方、居座り続け、不満を撒き散らし、後輩を支配して承認を得る行動は、はっきり言って「社会悪」である。
患者・利用者に向かうはずのエネルギーを、職場の消耗戦に変えてしまうからだ。
対応策
本人・上司・組織が取るべき対策
本人に必要なのは「批判の快」を断つこと
- 不満を言う前に「自分が変えられる行動」を1つ出す
- 「理解されない」ではなく「伝える責任」を持つ
上司がやるべきは「行動基準で評価する」こと
- 不満ではなく、改善提案の質で評価する
- 後輩への威圧・支配は即座に是正する
- 役割と期待値を明文化し、守れない場合の措置を決める
組織がやるべきは「心理的安全性の回復」
- 後輩が反論できる仕組み(1on1、匿名アンケ、相談ルート)
- ハラスメント境界の明文化と運用
- 「声の大きさ」ではなく「成果と協働」が報われる制度設計
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執筆者
高木 綾一

株式会社WorkShift 代表取締役
国家資格キャリアコンサルタント
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
呼吸療法認定士
修士(学術/MA・経営管理学/MBA)
関西医療大学保健医療学部 客員准教授
医療・介護分野の現場経験とマネジメントの専門性を活かし、リハビリテーション部門や多職種連携に関するコンサルティングを全国で展開している。
在宅領域および整形外科リハビリテーションの臨床に長年取り組み、現場の実態を踏まえた実践的な視点を強みとする。
医療機関や介護事業所の立ち上げ支援、教育体制の構築、組織マネジメント支援など、実践的かつ現場に根ざした支援を得意とする。
また、コンサルティング先に加え、リハビリ職種養成校等でも臨床からマネジメントまで幅広く講義を行い、現場で再現できる形に落とし込んだ知見の提供に力を入れている。
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