在宅リハビリテーションは、長らく「維持期のリハビリ」と位置づけられてきた。
機能の大きな回復は病院で行い、在宅では生活を支える。
この役割分担は、長年にわたり医療・介護関係者の共通認識であった。
しかし、2025年現在、この前提はすでに成り立たなくなっている。
その最大の理由は、入院医療の構造変化である。
在院日数の短縮、急性期・回復期病床の機能分化が進み、回復の途中段階で在宅へ戻る人が確実に増えている。
かつてであれば回復期病棟で担われていた基本動作や応用動作の改善が、現在では在宅・通所・訪問リハビリテーションに引き継がれている。
つまり、現代の在宅リハビリは、
「維持期」ではなく「回復期の延長線上」
として機能することが前提となりつつある。
この流れを制度面から見れば、決して突然の変化ではない。
2018年度介護報酬改定では、要介護度の改善を評価する仕組みが導入され、「自立・回復を達成した事業所を評価する」というメッセージが示された。
当時は、「生活期で回復を求めるのか」という戸惑いも少なくなかった。
しかし、2025年現在、その考え方は現場の実態と完全に一致している。
在宅で回復が起こる構造そのものが、すでに日常になっているからである。
生活期リハビリでは、これまで「活動」と「参加」が重視されてきた。
生活に結びついた視点であり、この方向性自体に違和感はない。
しかし、活動や参加は、心身機能・基本動作・応用動作という土台があって初めて成立する。
2025年の在宅現場では、
「活動と参加を支えるために、あらためて心身機能と動作に介入する」
というアプローチが不可欠になっている。
現在の介護保険リハビリテーションでは、心身機能・活動・参加を分断せず、一体として設計できる力がリハビリ職種に求められている。
単なる維持ではなく、
どこまで回復の可能性があるのか、
何が回復を阻害しているのか、
生活の中でどの動作を改善すべきなのか。
これらを評価し、説明し、実行できるリハビリ職種こそが、これからの時代に価値を持つ。
2040年に向けて、高齢者人口はピークを迎え、社会保障費の制約は一層厳しくなる。
その中で、単に「支える」だけのサービスは持続しない。
回復の可能性を見極め、生活の中で機能改善を生み出せるか。
この問いに答えられる事業所とリハビリ職種が、制度的にも社会的にも選ばれていく。
在宅リハビリテーションは、もはや「病院の後始末」ではない。
生活の場で回復を生み出す、もう一つの回復期である。
この視点を持てるかどうかが、2025年以降の介護保険リハビリテーション、そしてリハビリ職種の価値を大きく左右することになる。
介護報酬改定に関して理解を深めたい方はこちらから → 記事を読む
筆者
高木綾一

理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
三学会合同呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
国家資格キャリアコンサルタント
株式会社Work Shift代表取締役
関西医療大学 保健医療学部 客員准教授
医療・介護分野の経営戦略や人材育成に精通し、年間100回以上の講演を実施。
医療機関や介護事業所の経営支援を通じて、組織の成長と発展をサポートする。
著書には 「リハビリ職種のキャリア・デザイン」 や 「リハビリ職種のマネジメント」 があり、リハビリ職種のキャリア形成やマネジメントの実践的な知識を提供している。
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