加算ありき経営からの脱却 ― 組織力を高める介護報酬の使い方

介護報酬改定をめぐる議論は常に活発であり、介護保険制度そのものも定期的に大きな見直しが行われてきた。

特に注目されてきたのが、「自立支援」をどのように評価し、報酬へ反映させるのかという点である。

従来の介護報酬体系は、要介護度が高くなるほど報酬が増える構造であり、要介護度の改善や自立度の向上が、必ずしも事業所のメリットにならないという矛盾を抱えてきた。

この構造は長年にわたり問題視されており、介護サービスの質、とりわけアウトカムを評価する仕組みの必要性が指摘され続けている。

診療報酬と比較すると、介護報酬における「質の評価」は十分とは言えず、今後はアウトカムやプロセスに対する評価が、より厳密に求められていくことは避けられない。

その中で、アウトカム評価は加算という形で導入されることが多くなっている。

経営を安定させるために加算取得が重要であることは事実だが、ここで一度立ち止まる必要がある。

加算取得の本質は、経営の安定ではない。

加算とは、本来
「この事業所は、何を大切にしているのか」
「社会の中で、どのような役割を果たそうとしているのか」
を示す、事業所のアイデンティティの表明である。

しかし現実には、「取れる加算はすべて取る」「収益のために加算を増やす」という発想が先行しがちである。

その結果、加算取得のための業務が現場に過剰にのしかかり、加算ありきの事業所ほど、従業員が疲弊しているという構図が生まれている。

本来問われるべきは、

  • その加算は自社の戦略と合致しているのか

  • 現場がその意義を理解できているのか

  • 十分な教育・支援体制が整っているのか

  • 金銭的目的が先行していないか

という点である。

加算を「利益を上げるための手段」としてのみ捉えた瞬間、
そこには「数字しか見ていない経営」の姿勢が透けて見える。
その空気は必ず現場に伝わり、従業員のモチベーションを著しく低下させる。

一方で、
加算のための加算ではなく、
自社のアイデンティティを示すための加算を選び、磨き上げる。

この姿勢を貫いた事業所では、
理念と実践が結びつき、組織としての一体感が高まっていく。
結果として、サービスの質が向上し、組織力そのものが強化されていく。

最後に、あらためて問いかけたい。

あなたの事業所が算定している加算は、何のための加算だろうか。

介護報酬改定に関して理解を深めたい方はこちらから → 記事を読む

筆者
高木綾一

理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
三学会合同呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
国家資格キャリアコンサルタント
株式会社Work Shift代表取締役
関西医療大学 保健医療学部 客員准教授

医療・介護分野の経営戦略や人材育成に精通し、年間100回以上の講演を実施。
医療機関や介護事業所の経営支援を通じて、組織の成長と発展をサポートする。
著書には 「リハビリ職種のキャリア・デザイン」「リハビリ職種のマネジメント」 があり、リハビリ職種のキャリア形成やマネジメントの実践的な知識を提供している。
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