専門職の将来性はあるのか?少子化・社会保障費抑制時代のキャリア設計

過剰供給が緩和されても、報酬は上がらない理由

資格保持者が減れば、
「人手不足=待遇改善」と考えたくなる。

しかし現実には、
社会保障費抑制という大きな流れがそれを許さない。

  • 医療費・介護費の抑制は国家的課題

  • 診療報酬・介護報酬は構造的に抑制基調

  • 公的保険で賄われる専門職の報酬原資は増えない

つまり、
人が減っても、パイは広がらない

この構造の中では、
「人手不足だから給料が上がる」という単純な未来は来ない。

進むのは「自助」への明確なシフト

もう一つ、見逃してはならない流れがある。
それが、自助への誘導である(図1)。

  • 生活習慣病の予防

  • フレイル・介護予防

  • 口腔・栄養・運動の自己管理

  • 在宅・地域での自立支援

国は一貫して、
「治療して支える」から
「悪くならないように自分で管理する」方向へ舵を切っている。

この流れの中で重要なのは、
公的制度の中だけで完結する専門職の役割は、確実に縮小するという点だ。

図1 自助サービスは拡大する

専門職同士の競争激化

社会保障費は抑制され、
公的領域の市場は広がらない。

一方で、

  • 予防

  • 自費

  • 在宅

  • 地域

  • フィットネス

といった制度外・半制度領域には需要が生まれる。

この結果、何が起こるか。

各専門職が、
同じ市場を目指して越境し始めるのである。

  • 柔道整復師がパーソナルトレーナーとして活動

  • 理学療法士・作業療法士が予防・自費・地域事業に参入

  • パーソナルトレーナーが医療・介護対象者にアプローチ

  • 歯科衛生士が在宅・栄養・嚥下・健康支援へ活動を拡張

これは理想的な多職種連携ではない。

限られた市場を奪い合う競争である。

「資格があるから守られる」時代の終焉

過剰供給が緩和されても、
社会保障費は抑制され、
自助への流れは止まらない。

この3点を踏まえれば、結論は明確だ。

資格そのものが持つ保護機能は、今後さらに弱くなる。

評価されるのは、

  • どの社会課題を解決できるのか

  • 制度内か制度外かを問わず価値を出せるか

  • 利用者・地域・組織から「選ばれる理由」を持っているか

という、個人としての市場価値である。

これから必須となる2つの能力

この時代に、専門職が備えるべき能力は2つしかない。

1つ目は、
自分の専門性を、他職種が簡単に代替できないレベルまで高める力。

2つ目は、
制度に依存せず、他領域・他市場に参入できる力。

このどちらか、あるいは両方がなければ、
過剰供給が緩和されても生き残れない。

キャリアデザインとは「制度に依存しない準備」である

キャリアデザインは、夢を語るためのものではない。

ましてや、独立ありきの話でもない。

社会保障費抑制と自助への転換が進む中で、
自分の価値を制度の外でも成立させるための準備
である。

臨床を極めるのか。
予防・在宅・地域に軸足を移すのか。
教育、マネジメント、事業に関わるのか。

資格は入口に過ぎない。

これから問われるのは、
その資格を使って、どの市場で、どんな価値を出すのかだ。

過剰供給は緩和される。

しかし、守られる時代は終わる。

だからこそ今、
キャリアを設計できる専門職だけが、生き残る。

キャリアデザインに関して理解を深めたい方はこちらから → 記事を読む

筆者
高木綾一

理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
三学会合同呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
国家資格キャリアコンサルタント
株式会社Work Shift代表取締役
関西医療大学 保健医療学部 客員准教授

医療・介護分野の経営戦略や人材育成に精通し、年間100回以上の講演を実施。
医療機関や介護事業所の経営支援を通じて、組織の成長と発展をサポートする。
著書には 「リハビリ職種のキャリア・デザイン」 や 「リハビリ職種のマネジメント」 があり、リハビリ職種のキャリア形成やマネジメントの実践的な知識を提供している。
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