軽度者リハビリは生き残れるのか?

軽度者リハビリテーションを取り巻く環境は確実に変わっている

かつて、軽度者に対するリハビリテーションには「大改革の嵐が吹き荒れる」と予測されてきた。

社会保障費抑制の流れの中で、軽度者への医療・介護サービスは大幅に見直される――そう考えられてきたからである。

実際、2018年度の診療報酬・介護報酬同時改定では、医療保険における維持期リハビリテーションの終了が明確に示され、2019年度に要介護被保険者は介護保険リハビリテーションへ移行することが規定路線となった。

この流れを受け、多くの現場では「次は軽度者が切られる」という危機感が共有されてきた。

しかし、結果として2024年度の同時改定は想定された大改革には至らなかった

要介護1・2の介護保険リハビリテーションが一気に終了するような、急進的な制度変更は行われていない。

では、軽度者リハビリテーションは守られたのだろうか。

答えは、決して楽観できるものではない。

2024年改定が示したのは、「制度を壊す改革」ではなく、役割分担を前提とした緩やかな方向転換である。

現在、軽度者に対する支援は、次の二極化が明確になりつつある。

一つは、行政主体の介護予防・総合事業である。

地域包括ケアの枠組みの中で、集団型・地域型の介護予防、体操教室、フレイル対策が推進されている。

ここで求められているのは、医療的リハビリテーションというよりも、「生活機能を落とさないための仕組み」である。

もう一つは、民間主導のサービス領域である。

フィットネスクラブ、医療機関併設の運動指導施設、リハビリ専門職が関与する自費サービス、さらには文化教室や健康教室といった分野まで含まれる。

これらは制度に守られる世界ではなく、利用者の満足度と価値で選ばれる市場である。

軽度者リハビリの主戦場は「満足度」と「体験価値」へ

軽度者層のニーズは、確実に変化している。

「最低限の機能維持」よりも、「楽しい」「続けたい」「自分の生活が豊かになる」といった体験価値が重視される時代に入っている(図1)。

図1 体験価値が重視される介護予防

その結果、従来型のリハビリテーション
決められた時間、決められた内容、最低限の関与

こうしたサービスは、制度内であっても選ばれにくくなりつつある

特に、リハビリテーション特化型通所介護や、軽度者中心の通所サービスは、
・総合事業との機能重複
・価格競争
・差別化の困難さ
という構造的な課題に直面している。

今後は、「医療としてのリハビリ」か、「満足度を提供する運動・活動支援」か。

中途半端な立ち位置は、最も継続しにくい。

軽度者リハビリテーションの本当の改革はこれから始まる

制度上の大改革は起きなかった。

しかしそれは、安心材料ではない。

むしろ、市場原理による選別が静かに進んでいると捉えるべきである。

行政は最低限の介護予防を担い、それ以上の価値を求める層は、民間サービスへと流れていく。

この構造変化こそが、軽度者リハビリテーションにおける「本丸の改革」である。

そのとき、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士は、制度に守られる専門職として働き続けるのか
それとも、価値を提供し選ばれる専門職として市場に立つのか。

今こそ、真剣に考えるべき段階に来ている。

介護報酬に関して理解を深めたい方はこちらから → 記事を読む

筆者
高木綾一

理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
三学会合同呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
国家資格キャリアコンサルタント
株式会社Work Shift代表取締役
関西医療大学 保健医療学部 客員准教授

医療・介護分野の経営戦略や人材育成に精通し、年間100回以上の講演を実施。
医療機関や介護事業所の経営支援を通じて、組織の成長と発展をサポートする。
著書には 「リハビリ職種のキャリア・デザイン」 や 「リハビリ職種のマネジメント」 があり、リハビリ職種のキャリア形成やマネジメントの実践的な知識を提供している。
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