2025年現在の診療報酬改定・介護報酬改定が示すもの
アウトカム志向はさらに明確化し、リハビリテーション部門を含む医療機関・介護事業所には、機能分化と成果責任が強く求められる時代となっている。
2026年度診療報酬改定に向けた議論でも、「アウトカム評価」「入退院支援」「在宅復帰」「多職種連携」「生活期リハビリの質向上」などが中心的テーマとして扱われており、経営は確実に成果基準へ移行している。
施設基準や加算は、従来のようなストラクチャー要件(人員配置数・体制整備)を満たすだけでは維持が困難になった。
要件をクリアできなければ即座に加算の取り下げとなり、収益は一気に悪化する構造である。
ストラクチャー要件からアウトカム要件へ
病棟基準は看護師の数、リハビリテーションはPT・OT・ST数で決められるという構図は長く続いてきた。
しかし、この「人数=価値」という単純なモデルは崩壊しつつある。
実際、医療機関・介護施設の経営層からは次のような声が後を絶たない。
在宅復帰要件を満たせず病棟評価が下がる
誤嚥性肺炎や転倒が減らず入院期間が延長する
リハビリ職員が病棟経営の視点を理解できず在院日数が伸びる
これらは、経営課題を解決する能力が現場に不足していることを意味する。
国が求める成果を出せなければ経営は成立しない
2025年現在の制度は、国が解決したい課題(在宅移行、重度化予防、医療介護の効率化)を軸に組み立てられている。
つまり、経営とは国の定めた「成果指標」を達成するゲームである。
従来のように「なんとなくリハビリを提供していればよい」時代は終わった。
この流れを理解した経営者やリハビリマネージャーは、「自院・自事業所が求められるアウトカムを合理的に生み出す仕組み」を構築しなければならない。
リハビリ職種の教育研修は、経営課題の解決と連動していない
しかし、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士に対する教育は、依然として技術研修に偏っている。
筆者が知る限り、経営課題を解決するための体系的な教育プログラムを実践している組織は極めて少数派である。
ひどい場合には、「研修費用は出すので好きな研修を選んでよい」という制度を導入している事業所も散見される。
職員にとっては魅力的であるが、組織にとっては目的と成果が一致しないことがほとんどである。
リハビリ職種は職人気質であり、専門技術には強い関心を示すものの、経営やマネジメントへの関心は極めて低い。
そのような状態で「好きな研修に行ってください」と言うのは、投資対効果を考えると合理的ではない。
経営が成立しなくなる根本原因は「人材」である
病院も通所介護も訪問看護も、今後さらに倒産リスクが高まる。
表向きは「資金繰り悪化」と説明されるだろうが、本質は 経営課題を解決できる人材が育っていないことである。
2025年の医療・介護市場では、
アウトカム創出
多職種連携
在宅支援能力
リハビリ部門の生産性管理
人材育成と組織マネジメント
これらが事業存続の鍵となる。
リハビリ部門マネジメントこそ経営の要
これからのリハビリ部門には、以下の視点が必須となる。
アウトカム指標(在宅復帰率、FIM利得、歩行自立、嚥下改善など)の見える化
加算要件を逆算した業務設計(病棟・在宅・生活期の一体運用)
経営に直結するリソース配分と生産性向上
人材育成を組織戦略として設計すること
多職種連携を成果に変えるチームビルディング
もはや「技術が高いリハビリ部門」では不十分であり、「成果を出せるリハビリ部門」「経営に貢献するリハビリ部門」へ転換しなければ生き残れない。
最後に
診療報酬改定・介護報酬改定は、組織が何を目指すべきかを明確に示している。
しかし、その課題をどう乗り越えるかは各事業所の責任である。
2026年度診療報酬改定を見据え、今一度「経営課題を解決する教育・研修とは何か」を考え直すべきである。
リハビリ部門のマネジメント力こそ、組織の未来を左右する最大の投資である。
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筆者
高木綾一

理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
三学会合同呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
国家資格キャリアコンサルタント
株式会社Work Shift代表取締役
関西医療大学 保健医療学部 客員准教授
医療・介護分野の経営戦略や人材育成に精通し、年間100回以上の講演を実施。
医療機関や介護事業所の経営支援を通じて、組織の成長と発展をサポートする。
著書には 「リハビリ職種のキャリア・デザイン」 や 「リハビリ職種のマネジメント」 があり、リハビリ職種のキャリア形成やマネジメントの実践的な知識を提供している。
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