日本では従来から高齢化対策や介護予防にリハビリテーションが活用されてきたが、近年の動きは明確に次のステージへと進みつつある。
社会構造・災害リスク・医療ニーズの変化により、リハビリテーションが担う領域は急速に再定義されつつある。
災害大国日本に求められるリハビリテーション
地震・豪雨・風水害が常態化する日本では、災害発生後の生活再建を支える専門職としてリハビリテーションが強く求められている。
避難所での生活不活発病の予防、義肢や補装具の調整、重度障害者の生活支援など、災害医療チームと連携した継続支援が今後の標準となる。
災害時要配慮者の増加に伴い、災害リハビリテーションは国家的インフラとして重要度を高めていく。
働き手不足時代の産業リハビリ
労働人口が減少する日本では、就労不能期間を短縮し、生産性を維持するための産業リハビリが注目されている。
職場復帰支援、プレゼンティーズムの改善、腰痛・メンタル不調への介入など、企業が求めるニーズは急速に多様化している。
今後は、AIを活用した作業分析や職場環境調整が進み、産業リハビリは「企業の経営投資」として位置づけられる時代に入ると考える。
医療的ケア児へのリハビリの重点化
医療的ケア児が年々増加する中で、在宅・学校・地域での支援体制を整えることは喫緊の課題である。
リハビリテーションは姿勢・呼吸・摂食機能の維持に加えて、ICTや福祉用具と連携した参加支援へと領域を広げつつある。
家族介護の負担を軽減し、教育と生活をつなぐ専門職としての期待は極めて大きい。
今後は多職種と連携した包括的支援が求められる。
健康増進へのリハビリテーションのシフト
国の大方針として「治療から予防へ」の流れが加速している。
フレイル予防、生活習慣病予防、地域での健康教室、企業のウェルビーイング施策など、リハビリ専門職が関わる場面は増加している。
身体機能の改善だけでなく、認知予防、社会参加支援、運動習慣の形成など、健康寿命を最大化する領域での役割は今後さらに広がると予想する。
これまでの取り組みは基盤として継続
高齢化対策、介護予防、障害支援、急性期から生活期の一連のリハビリなど、従来の取り組みはすでに日本の医療・福祉に深く根付いている。
これらは土台として重要でありつつ、次のフェーズとして新領域への拡張が求められているのが現在地である。
日本はリハビリテーションの社会実装を加速させる段階に入った
日本は超高齢社会であり、災害が多く、労働力不足に直面し、医療的ケア児が増加し続ける国である。
この複合的な課題を解決し得る国家戦略として、リハビリテーションの重要性はますます高まる。特に新領域での活用は、先進国日本だからこそ実現できる取り組みである。
リハビリテーションは今後、医療の一部にとどまらず、社会インフラとしての役割を確立していくことが求められる。
筆者
高木綾一

理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
三学会合同呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
国家資格キャリアコンサルタント
株式会社Work Shift代表取締役
関西医療大学 保健医療学部 客員准教授
医療・介護分野の経営戦略や人材育成に精通し、年間100回以上の講演を実施。
医療機関や介護事業所の経営支援を通じて、組織の成長と発展をサポートする。
著書には 「リハビリ職種のキャリア・デザイン」 や 「リハビリ職種のマネジメント」 があり、リハビリ職種のキャリア形成やマネジメントの実践的な知識を提供している。
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