混合介護とは、介護保険サービス(保険内)と、全額自己負担となる介護保険外サービス(保険外)を組み合わせて提供する仕組みである。
保険内サービスだけでは対応できない領域を保険外サービスで補完することで、要介護者・家族双方にとって利便性が高まり、事業所にとっても収益性を高め職員処遇改善につながる可能性があると期待されている。
実は、混合介護は現行制度の中でも一部で認められている。
ただし、保険内サービスと保険外サービスを「時間」「内容」「料金体系」の面で明確に分離して提供することが厳格に求められており、事業者にとって運用上のハードルが高いのが実情である。
現行制度における混合介護には、「上乗せサービス」と「横出しサービス」が存在する。
上乗せサービスは、市町村が独自財源により保険サービスの時間・回数を拡充できる仕組みだ。
例えば、訪問介護の回数増加、訪問リハビリの延長、支給限度額を超えた福祉用具購入などが該当する。
一方の横出しサービスは、介護保険に存在しないサービスを、自治体または利用者自己負担によって提供するものである。
清掃、洗濯、配食、移送、買い物支援、家族向けの健康管理などが典型例であり、生活支援の「すき間」を埋める役割を持つ。
介護保険の横出しサービスには、自治体によって大きく異なるものの、極めて厳格な運用を求めているケースが実際に存在する。
多くの自治体では「保険内サービスと保険外サービスを同一時間帯に混在させてはならない」という国の原則を安全側に解釈し、保険内サービスの直後に連続して自費サービスを提供することを認めていない。
厚生労働省 老健局通知「介護保険サービスと保険外サービスを組み合わせて提供する場合の取扱いについて」
(平成30年9月28日/老推発0928第1号・老高発0928第1号・老振発0928第1号・老老発0928第1号)
混合介護をめぐる議論は、いま再び注目を集めている。
都市部を中心に、生活援助の補完、外出支援、専門性の高い自費リハビリなど、保険では対応しきれない領域で保険外サービスの利用が急速に拡大している。
特に家事支援、外出付き添い、フレイル予防、認知症ケア補助といった分野では、利用者の生活を実質的に支える手段として定着しつつある。
その一方で、ケアマネジャーや利用者の制度理解が追いついていないことが課題である。
保険内外の区分や契約手続き、ケアプラン上の整理方法が十分に共有されておらず、仕組みそのものの分かりにくさが「使いたいのに使いづらい」という状況を生んでいる。
さらに、自立支援との整合性や事業者の収益偏重への懸念、保険内サービスの質低下といった慎重論も根強い。
これらの論点は介護保険制度の公平性や持続可能性に関わるため、混合介護の議論では欠かせない視点である。
保険外サービスはすでに現場で広がりを見せているが、制度的枠組みと現場の実態の間には依然として大きなギャップがある。
いま求められているのは、ケアマネジャー・利用者への理解促進と、制度改善の両面を進めることで、適切な活用環境を整備することである。
混合介護は、単なる周辺的なテーマではなく、介護保険制度の将来を左右する重要課題へと位置づけ直されつつある。
筆者
高木綾一

理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
三学会合同呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
国家資格キャリアコンサルタント
株式会社Work Shift代表取締役
関西医療大学 保健医療学部 客員准教授
医療・介護分野の経営戦略や人材育成に精通し、年間100回以上の講演を実施。
医療機関や介護事業所の経営支援を通じて、組織の成長と発展をサポートする。
著書には 「リハビリ職種のキャリア・デザイン」 や 「リハビリ職種のマネジメント」 があり、リハビリ職種のキャリア形成やマネジメントの実践的な知識を提供している。
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