地域包括ケアシステムの概念を軸としたヘルスケアシステムの改革は、2025年の現在も加速度的に進行している。
筆者はリハビリテーション領域のコンサルティングを専門としているが、2025年現在、明確に一つの傾向を実感している。
それは 2020年以降に開業した介護事業所の方が、2010年以前から存在する老舗事業所よりも経営が安定しているケースが圧倒的に多い ということである。
■ 老舗の通所介護・診療所が相次いで淘汰されている現実
介護保険創設当初の2000年〜2010年頃は、報酬水準が高く競合も少なく、参入しただけで利益が得られる「ブルーオーシャン」の時代であった。
しかし2025年の市場環境は全く異なる。
軽度者の評価減
基本報酬の低額化
医療・看取り・認知症対応などの加算要件の高度化
行政処分・実地指導の厳格化
ライバル施設の増加
科学的介護・エビデンス経営の必須化
この急速な環境変化に対し、老舗事業所ほど適応が遅れ、通所介護や診療所の倒産・撤退が目立ってきている。
現場の感覚として最も深刻なのは、新しい情報への感度が低く、時代に合わせて経営モデルを刷新できない経営者・管理者の存在である。
「昔のやり方の延長」で事業が続く時代は既に終わっているが、それに気づかず変革を拒む組織が多い。
これこそが老舗事業所が衰退していく最大の要因である。
■ 一方で、後発組は荒波で鍛えられた世代
2020年以降に開業した事業所は、開業時点から地域包括ケアの厳しい政策環境に直面している。
そのため、
加算要件の取得
多職種連携
看取り対応
人材育成
科学的介護・データ提出
地域連携の構築
これらを最初からやるものとして受け止めており、変化への耐性が高い。
まさに 後発優位性(Late-mover Advantage)が発揮されている 状況である。
後発組は先発組の失敗パターンを学習し、無駄な投資を避け、改善されたビジネスモデルで参入できるため、結果として安定経営に結びつきやすい。
■ 老舗事業所には「第二創業」が不可欠である
2025年の介護・医療市場は、単なる延命策では生き残れない。
老舗事業所が再起するためには、経営学で言うところの 「第二創業(Second Foundation)」 が必要となる。
第二創業とは、既存事業をもう一度ゼロから作り直す経営のことであり、次の要素が必須である。
経営者の価値観のアップデート
過去の成功体験を捨て、地域包括ケア時代に必要な価値提供を明確化する。事業モデルの再定義
軽度者中心ビジネスから、重度・看取り・在宅移行支援などの高付加価値サービスへ転換する。組織文化の再構築
「昔のままでいい」という空気を排し、学習する組織へ変える。デジタル・科学的介護への適応
LIFE、フィジカルアセスメント、アウトカム評価などの標準装備化する。
第二創業を行う老舗は再び成長するが、拒む事業所は淘汰のスピードが加速する。
2025年以降は、まさに“第二創業できるかどうかが生死を分けるターニングポイントである。
■ 市場は「先発 vs 後発」の最終戦へ
今後の介護市場は、
古い慣習を捨てて再創業を果たす覚醒した先発組
vs
高度化環境を当然として育った強靭な後発組
による市場シェア争奪戦になる。
地域包括ケアシステムはまだ深化の途中であり、2026・2027年の改定ではさらに大きな転換が予想される。
変化に適応できる組織だけが次の10年を生き残るだろう。
筆者
高木綾一

理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
三学会合同呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
国家資格キャリアコンサルタント
株式会社Work Shift代表取締役
関西医療大学 保健医療学部 客員准教授
医療・介護分野の経営戦略や人材育成に精通し、年間100回以上の講演を実施。
医療機関や介護事業所の経営支援を通じて、組織の成長と発展をサポートする。
著書には 「リハビリ職種のキャリア・デザイン」 や 「リハビリ職種のマネジメント」 があり、リハビリ職種のキャリア形成やマネジメントの実践的な知識を提供している。
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