理学療法士が年間12,000人以上、作業療法士が5,000人以上、言語聴覚士が1,500人以上。
合計すると、毎年18,500人を超えるリハビリ職種が新たに誕生している。
このペースが続けば、10年間で約18万人、20年間では約37万人が新たに増えることになる。
一方で、国の制度設計はこの増加と逆方向に進んでいる。
厚生労働省では医療・介護分野の人員配置や診療報酬の在り方を見直す中で、理学療法士・作業療法士の需給バランスに関する議論が続いており、配置基準の見直しが今後進む可能性が高い。
また、特定の自治体でも「地域のリハビリ職種が過剰になりつつある」という認識が強まり、医療計画では役割再整理や在宅領域へのシフトが求められている。
ただ、ここにはポジティブな側面もある。
日本の高齢者数は2040年以降も高止まりし、リハビリニーズそのものが完全に消えるわけではない。
むしろ、介護予防・フレイル予防・在宅リハなど、多様なニーズは長期的に残り続ける。
少子化によって将来のリハビリ職種の供給が自然に抑制される可能性もあり、長期的な需給構造が必ずしも悲観一色というわけではない。
しかし、問題は「数」ではなく「質」である。
高齢者数が高止まりしても、質の担保ができなければ、その需要をリハビリ職種が十分に受け止められない。
新人が大量に現場に入り続け、教育投資が限られる現在の構造では、どうしても技術格差が広がり、誤った介入や専門性の低下が生じやすい。
さらに深刻なのは、社会全体の風潮だ。
ワークライフバランスの重要性が強調されるあまり「仕事時間は減らすべき」「自己研鑽はほどほどでいい」という誤ったメッセージが強まりつつある。
もしこの風潮がさらに強まれば、質を保つどころか、リハビリ職種全体の専門性が急激に低下するリスクすらある。
もちろん、適切な休息や働き方改革は必要だ。
しかし、本来のワークライフバランスとは「仕事も生活もより良くするための調整」であって、「努力を減らすこと」ではない。

もし「負担を減らすこと=成長を止めること」と勘違いする働き方が広がれば、2040年以降も続くはずのリハビリ需要を、リハビリ職種自身が取りこぼしてしまう。
供給抑制が進む可能性があっても、需要が高止まりしても、質が保てなければ意味がない。
むしろ、数が増えたからこそ、今の段階で質の向上が欠かせない。
具体的に、質の低下が生じるパターンを整理すると次の通りである(表1)。
表1 質の低下のパターン
ある医師に「将来的にリハビリ需要が一気に減ったらどうするのか」と質問した際、「全員リストラするしかないでしょ」と返されたことがある。
過酷に聞こえるが、資本主義における現実だ。
どの業界でも生き残るのは「選ばれる価値」を提供できる事業者だけである。
ただし、ここで誤解してはいけない。
これは決して「希望がない」という話ではない。
むしろ逆である。
質の高いリハビリ職種にとっては、今後の社会はむしろチャンスが増える。
2040年以降もニーズは続く。
少子化で供給抑制が進めば、希少性が高まる。
地域包括ケアが進めば、在宅・地域で活躍の場が広がる。
そして何より、利用者・患者が求めているのは「質の高いリハビリ」である。
未来を左右するのは
・制度
・人口構造
・景気
ではない。
「質の高いリハビリを提供できるか」
この一点に集約される。
数が増えても減っても、制度が変わっても、社会のニーズが変わっても、
最終的に生き残るのは、圧倒的な実力を持ち、利用者から選ばれるリハビリ職種である。
筆者
高木綾一

理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
三学会合同呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
国家資格キャリアコンサルタント
株式会社Work Shift代表取締役
関西医療大学 保健医療学部 客員准教授
医療・介護分野の経営戦略や人材育成に精通し、年間100回以上の講演を実施。
医療機関や介護事業所の経営支援を通じて、組織の成長と発展をサポートする。
著書には 「リハビリ職種のキャリア・デザイン」 や 「リハビリ職種のマネジメント」 があり、リハビリ職種のキャリア形成やマネジメントの実践的な知識を提供している。
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