リハビリ職のキャリアは資格から始まり、「人間力」で完成する

筆者は、仕事柄、全国のリハビリ職種と出会う機会が多い。

経営コンサルタントとして活動していると、当初は高圧的な態度で接していたリハビリ職種が、筆者が同じ理学療法士であると知った途端に態度を軟化させる場面にしばしば遭遇する。

同様の構造は、現場でも多く見られる。

医師には過度に気を遣うが、学生には厳しく接する。

介護士には上から目線で指導するが、看護師には遠慮して意見しない。

後輩には強く出るが、上司との議論は避ける。

このような行動の背景には、「資格」に依存した自己認識があると考えられる。

つまり、資格によって自分の価値を測ろうとする「外的基準依存型」のキャリア形成である。

キャリア発達理論の第一人者ドナルド・スーパーは、「キャリアは生涯を通じた自己概念の実現である」と述べている。

しかし、資格に強く依存するリハビリ職種は、この「自己概念(self-concept)」が資格という外的要素に固定化されてしまいがちである。

その結果、専門職としてのアイデンティティが「資格の序列」や「職種間の優劣」によって左右される構造が生まれる。

また、シャインのキャリア・アンカー理論でいえば、これらのセラピストは「専門・職能的コンピテンス(Technical/Functional Competence)」に過度に傾いたアンカーを持つ傾向がある。

専門知識の深化そのものは価値あることだが、それを「他者より上であることの証」として扱うと、結果的にキャリアの幅を狭めてしまう。

資格はあくまで特定の業務を行うためのパスポートにすぎない。

パスポートを持つこと自体が、価値の保証ではない。

今後、リハビリ職種の過剰供給や少子化の影響により、賃金の低下や有効求人倍率の悪化、さらには養成校の統合・閉鎖が進む可能性が高い。

このとき、「資格という紙切れ」以外に自らの価値を示すことができない人材は、市場から急速に淘汰される。

逆に、「資格は手段であって目的ではない」と理解し、「人としての価値」を高める努力を続けてきたリハビリ職種は、生き残るどころか市場での希少性を高めていく。

これは、雇用の安定性ではなく、個人の市場価値を高めていくエンプロイアビリティ(雇用され得る能力)の視点にも一致する。

これからの時代、資格そのものよりも、「どのような姿勢で仕事に向き合い、どんな人間的価値を提供できるか」が問われる。

つまり、リハビリ職種のキャリアは、「専門知識の深さ」よりも「人間としての広さ」によって評価される時代に突入している。

資格を得た時点が「スタート」であり、そこからどれだけ自らを磨くかが勝負である。

「資格はただの紙切れ」であるという事実を認識することこそが、リハビリ職種として、そして一人の人間としてのキャリアを真に発展させる出発点となる。

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筆者
高木綾一

理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
三学会合同呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
国家資格キャリアコンサルタント
株式会社Work Shift代表取締役
関西医療大学 保健医療学部 客員准教授

医療・介護分野の経営戦略や人材育成に精通し、年間100回以上の講演を実施。
医療機関や介護事業所の経営支援を通じて、組織の成長と発展をサポートする。
著書には 「リハビリ職種のキャリア・デザイン」 や 「リハビリ職種のマネジメント」 があり、リハビリ職種のキャリア形成やマネジメントの実践的な知識を提供している。
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