いい人をやめなければ、仕事はできるようにならない

医療・介護コンサルタントとして仕事をしていると、現場でしばしば次のような会話に出くわす。

私:「〇〇さんは、ルールも守れず、自主性もないので管理者としては不適切ですね」
クライアント:「そうなんですよ。問題だらけです。でも、いい人なんですよ。本当に。」

この「いい人なんですよ」という言葉を、私は何度も聞いてきた。

一見すると温かい評価のようであるが、実際には「能力的には問題があるが、人間的には悪くない」という、仕事上の問題を曖昧にする免罪符として使われていることが多い。

「いい人」という言葉の裏には、「仕事はできないが、憎めない」「成果は出せないが、人当たりは良い」という意味が隠されている。

しかし、職場とは、人柄を競う場ではない。

組織の目的は成果を上げ、利用者や患者に価値を提供することである。

そのために必要なのは「いい人」ではなく「できる人」である。

どれほど人柄が良くても、ルールを守らず、課題解決に向き合えない人材は、結果として周囲に負担をかける存在になる。

「いい人だから仕方がない」と許していては、組織は成長しない。

仕事ができる人は、たいてい「いい人」ではない。

彼らは組織やチームのために、相手が嫌がることを平然と言う。

必要であれば、厳しい指摘を行う。

その姿勢があるからこそ、チームが変わり、成果が上がる。

そして、そうした人は往々にして「きつい人」「怖い人」と呼ばれる。

だが、その厳しさの根底には、責任感と組織を良くしたいという意志がある。

20代のうちは「いい人」で評価されることもある。

協調性があり、空気を乱さず、周囲との関係を良好に保つことは重要である。

しかし、30代、40代になると「いい人」であることは通用しない。

この年代には、課題に踏み込み、チームを動かし、結果を出すことが求められる。

人間関係を壊したくないがために本質的な問題を避ける「いい人」は、結果としてチームの成長を止める存在となる。

「衝突を避けること」が目的化した瞬間に、仕事の本質は見失われる。

仕事の世界では、いい人であることよりも、信頼されることが重要である。

信頼される人とは、相手の成長や組織の成果を考え、必要な言葉を発する人である。

その言葉が厳しくても、相手が真に理解したとき、「あの人がいてよかった」と言われるようになる。

それが「信頼される人」であり、単なる「いい人」との決定的な違いである。

仕事で評価されたいなら、「いい人」を卒業しなければならない。

「嫌われたくない」「波風を立てたくない」という感情を捨て、信頼される厳しさを身につける必要がある。

いい人と呼ばれて喜んでいるうちは、まだプロフェッショナルではない。

仕事の世界では、「優しい人」ではなく「結果を出す人」が評価される。

だからこそ、私たちは「いい人」という仮面を脱ぎ捨て、「信頼される人」「結果を出す人」へと進化していかなければならない。

それこそが、組織に価値をもたらし、真のプロフェッショナルとして生きる道である。

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筆者
高木綾一

理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
三学会合同呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
国家資格キャリアコンサルタント
株式会社Work Shift代表取締役
関西医療大学 保健医療学部 客員准教授

医療・介護分野の経営戦略や人材育成に精通し、年間100回以上の講演を実施。
医療機関や介護事業所の経営支援を通じて、組織の成長と発展をサポートする。
著書には 「リハビリ職種のキャリア・デザイン」 や 「リハビリ職種のマネジメント」 があり、リハビリ職種のキャリア形成やマネジメントの実践的な知識を提供している。
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