仕事の定義は大きく変わりつつある。
世界、そして日本を取り巻く環境は劇的に変化し、経済成長の停滞、揺らぐ社会保障、格差の拡大、政情不安、気候変動やエネルギー問題など、社会課題は山積している。
もはや、安定した成長や生活の保証は約束されておらず、企業も労働者も状況に応じて柔軟に対応できなければ、容易に危機に陥る時代となった。
かつては与えられた仕事をこなすだけで、昇進や昇給、年金や退職金といった見返りが得られた。
しかし今、それは非現実的な幻想にすぎない。
与えられたことをこなすだけの働き方には限界が来ており、十分に生活できるだけの報酬を得ることすら難しくなっている。
これは理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、看護師といった医療専門職にとっても深刻な問題である。
では、仕事は単に金銭を得るための手段なのだろうか。
哲学者や経営者、専門家たちは、仕事をさまざまに定義してきた。
「収入を得るためのもの」「与えられたことをこなすもの」「命令に従うもの」「夢を叶えるもの」「やりたいことをするもの」「一つに打ち込むもの」など、仕事に関する考え方は数多く存在する。
筆者は「仕事とは、自分が自分で在り続けられることを確認する営み」だと考えている。
存在意義を感じられるとき、人は自分の価値観を満たし、充実感を覚える。
その瞬間、仕事は単なる労働ではなく、生きている実感そのものになる。
逆に、資格や職を持っていても存在感を実感できなければ、それはある意味で失業と変わらないのではないか。
理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、看護師の中で、どれほどの人が自分の存在を感じながら仕事に向き合っているだろう。
安定収入を動機に資格を取った人も少なくない。
しかし、それだけで最後に「素晴らしい仕事人生だった」と言えるのだろうか。
本当にそう思えるためには、「生活を支えるための仕事」と「存在意義を感じられる仕事」をバランスよく行うことが求められる。
筆者
高木綾一
理学療法士
認定理学療法士（管理・運営）
三学会合同呼吸療法認定士
修士（学術/MA）（経営管理学/MBA）
国家資格キャリアコンサルタント
株式会社Work Shift代表取締役
関西医療大学 保健医療学部 客員准教授
医療・介護分野の経営戦略や人材育成に精通し、年間100回以上の講演を実施。
医療機関や介護事業所の経営支援を通じて、組織の成長と発展をサポートする。
著書には 「リハビリ職種のキャリア・デザイン」 や 「リハビリ職種のマネジメント」 があり、リハビリ職種のキャリア形成やマネジメントの実践的な知識を提供している。
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