近年、診療報酬・介護報酬制度において在宅医療の評価体系は大きな転換点を迎えている。
在宅領域は、これまで訪問回数や居住形態といった外形的な要素によって報酬が算定されてきた。
しかし、医療・介護の在宅シフトが急速に進む中で、患者の重症度や医療的ニーズを反映しない仕組みは、制度の持続性や現場の実態との乖離が問題視されつつある。
現状、訪問診療・訪問看護・訪問リハビリテーションは「一定回数の包括算定」や「時間単位での出来高算定」が基本であり、患者のADL水準や医療必要度は報酬に直接反映されない。
訪問看護において一部の疾患加算は存在するものの、ほとんどのケースでは重症度による報酬差は認められていない。
にもかかわらず、急性期病床削減や平均在院日数の短縮が進み、人工呼吸器管理や胃瘻、疼痛コントロールなど高度な医療処置を必要とする患者が在宅に移行している。
結果として、在宅で生活する患者の重症度の幅は大きく拡大している。
現在、中央社会保険医療協議会では、2026年度診療報酬改定に向けた議論が精力的に進行している。
特に注目されているのは、在宅医療のさらなる充実と提供体制の整備である。
入院・外来医療のみならず、在宅分野においても、患者の状態や医療ニーズを反映した評価が検討されつつある。
今後は軽症患者の評価が相対的に下がり、重症患者への対応が高く評価される方向に制度がシフトする可能性が高い。
末期の悪性腫瘍や進行性神経疾患、頚髄損傷、人工呼吸器管理など、医療行為と疾患像が比較的明確に連動するケースは、優先的に評価対象となることが予想される。
ただし、重症の定義づけは容易ではない。
同じ疾患名であっても処置内容やADLは個別性が大きく、評価指標の設計が難題となる。

したがって、今後は「疾患名+医療行為+ADL指標」といった複合的な評価軸の導入が検討されることになるだろう。
訪問リハビリテーションについても、現状は時間単位の評価に留まっている。
しかし、もし訪問診療や訪問看護において重症患者の評価が制度化されれば、リハビリテーション領域でも同様に「重症対応への評価」が導入される可能性が高い。
特に、在宅での機能維持・生活支援を担う訪問リハビリは、重症患者のQOL維持と社会的コスト抑制の両立に寄与し得る分野であり、今後の改定の焦点となることは間違いない。
筆者
高木綾一

理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
三学会合同呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
国家資格キャリアコンサルタント
株式会社Work Shift代表取締役
関西医療大学 保健医療学部 客員准教授
医療・介護分野の経営戦略や人材育成に精通し、年間100回以上の講演を実施。
医療機関や介護事業所の経営支援を通じて、組織の成長と発展をサポートする。
著書には 「リハビリ職種のキャリア・デザイン」 や 「リハビリ職種のマネジメント」 があり、リハビリ職種のキャリア形成やマネジメントの実践的な知識を提供している。
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