2050年に向けた人口減少社会の課題とチャンス

日本の人口減少が止まらない。国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、2100年には最悪3,770万人にまで減少する可能性がある。

これは、現在(2025年)の約1億2,300万人から70%近く減る計算である。

人口減少は、日本経済だけでなく、働き方や価値観に大きな影響を及ぼすことが避けられない。

人口減少は日本だけの問題ではなく、ヨーロッパ諸国でも進行している。

欧米では出生率向上のための育児支援や積極的な移民受け入れが進められている。

特にドイツは、日本同様に少子高齢化に直面しているが、大量の移民を受け入れることで労働力確保を図っている。

一方、日本は出産・育児環境の整備が不十分であり、移民政策も限定的にとどまっている。

また、婚姻制度や戸籍制度が少子化要因の一つであるとの指摘も根強い。

ヨーロッパでは事実婚でも社会制度が利用できるが、日本では入籍が前提となり、妊娠・出産に大きな心理的ハードルとなることもある。

こうした文化的・制度的な背景も、少子化を加速させている。

人口減少と高齢化が進むことで、日本は経済規模の縮小を避けられない。

現役労働人口が減る一方で、高齢者はさらに増加し、社会保障費の負担は重くなる。

すでに地方では「高齢者が多数を占め、若年労働者が不足する」という状況が広がっており、これは将来の都市部の姿を先取りしているとも言える。

2025年は団塊の世代が後期高齢者(75歳以上)に突入する「2025年問題」の年である。

しかし、さらに深刻なのは、2050年に団塊ジュニア世代が後期高齢者となる局面だ。

団塊ジュニアは団塊世代より人口が多く、長寿化も進むが、社会保障を支える若者は減少し、資産を持たない層も多い。

その結果、「長寿でありながら貧困」という新たな社会問題が顕在化するリスクが高い。

この状況を見据え、私たちは次のような具体策に取り組む必要がある。

高齢者の再雇用支援や職場環境整備により安全に働ける環境をつくること
親の介護による離職を防ぐために柔軟な介護サービスを拡充すること
そして、介護保険制度を「要介護度を改善・軽減するリハビリテーション」へと転換していくことが欠かせない。

特にフィジカルアセスメントを基盤とした科学的介護・リハビリの推進が求められる。

人口減少社会においてリハビリ職種が果たす役割は大きい。

労働力不足が深刻化する中で、高齢者の心身機能を維持し就労継続を支援すること、介護予防を通じて医療・介護費の増大を抑制すること、在宅での生活を支え地域包括ケアを実現することが期待される。

単なる機能訓練の専門家にとどまらず、社会参加や生活支援を通じて「人口減少時代の持続可能性」に直接寄与する存在となるべきである。

人口減少は日本社会にとって深刻な課題であるが、同時に新しいビジネスや社会モデルを生み出す契機でもある。

ピンチはチャンス。

社会課題のあるところに、必ず新たな価値創造の機会がある。

引用:国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」(2023年推計)

筆者
高木綾一

理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
三学会合同呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
国家資格キャリアコンサルタント
株式会社Work Shift代表取締役
関西医療大学 保健医療学部 客員准教授

医療・介護分野の経営戦略や人材育成に精通し、年間100回以上の講演を実施。
医療機関や介護事業所の経営支援を通じて、組織の成長と発展をサポートする。
著書には 「リハビリ職種のキャリア・デザイン」 や 「リハビリ職種のマネジメント」 があり、リハビリ職種のキャリア形成やマネジメントの実践的な知識を提供している。
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