リハビリ職種のキャリアを変えるパラダイムシフト

地域包括ケアシステムの推進、急性期病床の削減、介護保険制度の改変、さらには理学療法士の供給過剰に関する報道など、リハビリ職種を取り巻く環境変化は著しいものである。

これらの外的要因は、リハビリ職種に従事する者の働き方や生き方に、従来とは異なる選択を迫っていると言える。

近年、多くのリハビリ職種が、自らのキャリアにパラダイムシフトが生じつつあることを認識し始めている。

パラダイムシフトとは、社会的に当然視されていた価値観や行動様式が劇的に変化する現象である。

まさにリハビリテーション分野は、その渦中にある。

外部環境の変化に適応し、自らのキャリアを主体的に再構築できる者こそ、新たな時代において充実感と成長の機会を享受できるのである。

キャリア理論の観点からも重要なのは、「理念」と「行動」のバランスである。

理念はキャリアの方向性を示すコンパスとなるが、それだけでは不十分である。

多くのリハビリ職種は理念を掲げることに満足し、実際の行動を伴わない「理念先行型キャリア」に陥る。

これは、キャリア形成における典型的な停滞パターンである。

理念を言葉にするだけでなく、それを具現化する行動を積み重ねることがキャリアの質を高める。

リハビリテーションやヘルスケア産業には、依然として多様な機会が存在する。

地域包括ケアにおける専門的役割の確立、高度急性期領域での専門性発揮、高齢労働者支援や二次予防事業への参画、在宅重症患者対応能力の獲得など、可能性は広がっている。

こうした機会は、抽象的な理念を掲げるだけでは掴めない。

理念を具体的な行動に転換した者のみが、その機会を手にすることができる。

行動の形は多様である。

専門家との対話、新しい活動の小規模な試行、非常勤勤務の経験、新規企画の提案、勉強会の開催など、小さな行動がキャリア機会の芽を生み出す。

キャリア理論においても、こうした「試行錯誤的行動(trial and error)」や「プランニングと実践の循環」が、職業的アイデンティティを形成する重要なプロセスであるとされている。

ゆえに、理念を行動に結びつけないリハビリ職種は、このパラダイムシフトを乗り越えることはできない。

理念と行動を循環させ、外的環境の変化を自己成長の契機へと転換できる者のみが、次代のリハビリ職種として活躍し続けるのである。

筆者
高木綾一

理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
三学会合同呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
国家資格キャリアコンサルタント
株式会社Work Shift代表取締役
関西医療大学 保健医療学部 客員准教授

医療・介護分野の経営戦略や人材育成に精通し、年間100回以上の講演を実施。
医療機関や介護事業所の経営支援を通じて、組織の成長と発展をサポートする。
著書には 「リハビリ職種のキャリア・デザイン」 や 「リハビリ職種のマネジメント」 があり、リハビリ職種のキャリア形成やマネジメントの実践的な知識を提供している。
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