高齢化率40%時代に備える ― いま私たちが考えるべきこと

日本は今後、大きな局面を迎える。

高齢化はすでに深刻であり、総務省統計局の人口推計(2024年10月速報)によれば、65歳以上人口は約3624万人、総人口の29.3%を占めている。

国立社会保障・人口問題研究所の将来推計によれば、65歳以上人口は2025年に約3677万人でピークを迎え、その後は減少に転じると見込まれている。

したがって、しばしば語られる「2040年が高齢者数のピーク」という表現は厳密には正しくない。

正しくは、75歳以上人口が2040年前後にピークを迎えるのであり、この時点で約2400万人を超えると推計されている(内閣府「高齢社会白書」2024年版)。

さらに、人口全体が減少していくため、高齢化率そのものは2040年以降も上昇を続け、2070年には38.7%に達するとされている。

つまり、日本社会には二つの局面がある。

第一に2025年に65歳以上人口がピークを迎え、その後は緩やかに減少していく局面。
第二に2040年前後に75歳以上人口がピークに達し、医療・介護の需要が最も高まる局面である。

これ以降は高齢者人口が減少する一方で、高齢化率は上昇し続け、社会の構造的負担が残る。

この現実を踏まえれば、今後十数年間は医療・介護従事者の需要が増加し、量産体制が続くことは避けられない。

資格制度の規制緩和、養成校の新設や大学の学部改組などが進められ、2040年前後の需要に対応するための施策が展開されてきた。

しかし2040年以降に関しては、医療・介護需要の縮小を見据えた明確な政策が打ち出されていないのが現状である。

現実的には、大都市を除く地方都市では急性期病床の1割から3割が削減され、特別養護老人ホームなどの新設も抑制されている。

これは2040年以降の人口減少を視野に入れた出口戦略が水面下で始まっていることを示している。

加えて、ヘルスケアビジネスの世界では規制緩和や制度改訂が進む一方で、不要と判断された事業の淘汰が始まっている。

参入障壁の低さから次々と新しい企業が参入しては淘汰されており、「安定市場」と誤認して参入した企業が撤退を余儀なくされる事例も増えている。

市場規模があるからといって、生き残れるわけではないのである。

このままの市場モデルでは、医師、看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、歯科衛生士といった医療・介護従事者が確実に余剰となる時代が訪れる。

2040年代に引退し資産に恵まれた人々を除けば、多くの現役世代にとってこれは切実な問題であり、真剣に考えなければならない課題である。

我々が今後対峙すべきは、2040年までの需要拡大期に対応する地域包括ケアシステムの構築と、2040年以降の市場縮小局面に備えた職域拡大の戦略である。

人口動態の変化はすでにデータとして明確に示されており、それを見据えて行動するか否かが、今後の医療・介護・シニアビジネスの命運を分けるのである。

筆者
高木綾一

理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
三学会合同呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
国家資格キャリアコンサルタント
株式会社Work Shift代表取締役
関西医療大学 保健医療学部 客員准教授

医療・介護分野の経営戦略や人材育成に精通し、年間100回以上の講演を実施。
医療機関や介護事業所の経営支援を通じて、組織の成長と発展をサポートする。
著書には 「リハビリ職種のキャリア・デザイン」 や 「リハビリ職種のマネジメント」 があり、リハビリ職種のキャリア形成やマネジメントの実践的な知識を提供している。
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