改定直後の熱狂はなぜ続かないのか

介護・医療の報酬改定は数年ごとに繰り返され、そのたびに事業所は大きな対応を迫られる。

診療報酬は医療機関が提供する診療やリハビリなどへの公的保険からの支払いであり、原則2年ごとに改定される。

一方、介護報酬は介護事業所による生活支援や自立支援に対して介護保険から支払われ、3年ごとの改定が基本となる。

いずれも単なる収益の基盤ではなく、国が医療・介護の方向性を示す政策的なツールであり、改定内容は現場の働き方や体制整備に直結する。

特に2024年の診療・介護報酬同時改定では、医療から介護への円滑な移行や在宅生活の支援、アウトカム評価の拡大、人材確保の強化などが重視された。

これにより、事業所は従来以上に連携体制の整備や現場での実務対応を求められている。

改定直後の数か月間、経営層や管理職は熱心に会議を重ね、多くの指示を現場に下す。

しかし、時間が経過すると、その熱量は急速に低下し、現場任せの姿勢に変化していくことが少なくない。

現場は新加算の取得や体制整備に追われる中で、むしろ悩みを共有し、ともに考える上司を求めている。

だが、実務が複雑化するほど、経営層は「権限委譲」や「自律的な現場」といった言葉を掲げながら、実際には業務から距離を置くことが多い。

そして数か月後、経営者から突然「加算は取得できているのか」と問いただされ、未達であれば叱責を受ける。

このような対応は、現場との信頼関係を大きく損ない、組織の持続力を低下させる。

経営環境が激変する時こそ、リーダーは現場に寄り添い、共に考える姿勢を示す必要がある。

従業員の悩みや提案に耳を傾け、「自分にできることはないか」と声をかけることが、組織全体の適応力を高める。

環境変化に対して現場を支える姿勢を持つことこそが、2025年の介護・医療事業における最大の経営課題である。

筆者
高木綾一

理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
三学会合同呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
国家資格キャリアコンサルタント
株式会社Work Shift代表取締役
関西医療大学 保健医療学部 客員准教授

医療・介護分野の経営戦略や人材育成に精通し、年間100回以上の講演を実施。
医療機関や介護事業所の経営支援を通じて、組織の成長と発展をサポートする。
著書には 「リハビリ職種のキャリア・デザイン」 や 「リハビリ職種のマネジメント」 があり、リハビリ職種のキャリア形成やマネジメントの実践的な知識を提供している。
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