医療・介護事業における最大の経営資源は、現場で働く職員である。
職員の生産性やサービス品質の高さは、そのまま経営成果に直結する。
2025年現在、診療報酬・介護報酬改定の方向性は機能分化を強く促しており、医療・介護事業所が地域において果たすべき役割は一層明確になってきている。
高度急性期では脳卒中や循環器疾患に特化した病院が増加し、在宅医療分野でもリハビリテーションや看取りに特化した診療所・訪問看護ステーションが増えている。
同じ病期や時期であっても、対象とする顧客層を明確に選択する事業所が主流になりつつある。
専門特化はマーケティングおよび事業戦略上、不可欠な要素であり、適正な事業ポジショニングは現代の医療・介護経営において極めて重要である。
しかし、選択した専門領域での人材育成に苦戦している事業所は多い。
経営者はマーケティングの結果として特定領域に舵を切る決断を下すが、社内人材の不足により事業計画が頓挫する例は少なくない。
たとえば訪問看護ステーションがリハビリ特化を掲げても、理学療法士や作業療法士を単に採用すれば事足りるわけではない。
どの領域のリハビリに特化するのかという事業領域の定義が曖昧であれば、採用方針も育成方針も一貫性を欠く。
終末期リハビリ、脳卒中リハビリ、摂食嚥下リハビリなど、注力する領域によって人材育成戦略は大きく異なる。
さらに、現状では多くの理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護師が、自らの技術と経営との融合や最適化を十分に意識していない。
しかし、雇用されている以上、組織が必要とする技術を優先的に高めることは職業人としての責務である。
たえば、整形外科クリニックにおいてリハビリ処方の上位3疾患が肩関節周囲炎・腰痛症・変形性膝関節症である場合、その現場で脳卒中や足関節疾患の技術ばかりを磨いているセラピストは、方向性の修正を求められるべきである。
医療・介護技術をいかに経営・運営に結びつけ、組織価値を高めるかという視点を持たない職員は、これからの市場で高く評価されることはない。
筆者
高木綾一

理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
三学会合同呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
国家資格キャリアコンサルタント
株式会社Work Shift代表取締役
関西医療大学 保健医療学部 客員准教授
医療・介護分野の経営戦略や人材育成に精通し、年間100回以上の講演を実施。
医療機関や介護事業所の経営支援を通じて、組織の成長と発展をサポートする。
著書には 「リハビリ職種のキャリア・デザイン」 や 「リハビリ職種のマネジメント」 があり、リハビリ職種のキャリア形成やマネジメントの実践的な知識を提供している。
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