多くの看護師・療法士とって病院・診療所・介護施設の経営は他人事である

帝国データバンクの調査によれば、近年、医療機関や介護事業所の倒産件数は増加傾向にある。

特に、介護事業所と診療所における倒産件数の伸びが顕著である。

背景には、事業所数の増加による競争激化、物価高騰、人材確保難などがある。

わずかな競合環境の変化や収益減少でも経営が立ち行かなくなる事業所が増えているのが実情である。

2010年頃までは、多角経営の失敗や過剰な設備投資が倒産原因の中心であった。

しかし近年では、診療報酬・介護報酬の引き下げ、利用者減少、人材採用難、エネルギーや物資のコスト上昇など、経営環境の変化に対応できず業績不振に陥るケースが大半を占める。

特に2024年度の診療報酬・介護報酬のダブル改定以降、減収傾向が強まり、資金繰りが限界を迎える事業所が増えている。

地域によっては、事業継続を断念し廃業を選ぶケースも目立ち始めている。

医療機関や介護事業所の事業継続を支えているのは間違いなく現場の職員である。

しかし、職員に経営参画の意識がなければ今後の存続は極めて困難である。

経営者や管理職層の経営意識が低ければ、組織は一気に経営危機へと傾く。

現場職員の多くは、自らの専門性発揮を第一と考え、経営は自分事ではないと捉えがちである。

しかし、経営体力が残っているうちに経営指標や現状を共有し、危機感と改善意識を組織全体に浸透させることが急務である。

改善策を効果的に実行するためには、職員の経営参画意識を高め、組織のモチベーションを引き上げなければならない。

そのためには、組織風土の醸成、採用基準の厳格化、経営幹部の強いリーダーシップ、中間管理職の確実なフォロアーシップ、そして継続的な研修によるスキル向上が欠かせない。

これらは基本でありながら、多くの組織で軽視されている。

しかし経営は他人事ではなく自分事である。

倒産リスクの高い組織で働き続けることは、自らのキャリアや成長の機会を失うことにつながる。

今後の時代を生き残るためには、現場一人ひとりが経営の一翼を担う意識を持つことが不可欠である。

職員が経営意識を持てない最大の要因は、経営者がその重要性を伝えてこなかったことにある。

経営情報を開示せず、現状や課題を共有しない組織では、職員は経営を自分事として捉えられない。

経営者が率先して現場に数値や方針を示し、経営参画の場を設けることで初めて意識は育つ。

経営参画意識の欠如は現場の責任ではなく、組織文化を築けなかった経営者の責任である。

筆者
高木綾一

理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
三学会合同呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
国家資格キャリアコンサルタント
株式会社Work Shift代表取締役
関西医療大学 保健医療学部 客員准教授

医療・介護分野の経営戦略や人材育成に精通し、年間100回以上の講演を実施。
医療機関や介護事業所の経営支援を通じて、組織の成長と発展をサポートする。
著書には 「リハビリ職種のキャリア・デザイン」 や 「リハビリ職種のマネジメント」 があり、リハビリ職種のキャリア形成やマネジメントの実践的な知識を提供している。
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