不整脈の発生機序は、①興奮発生の異常と、②興奮伝播の異常の2つに大別することができる。
不整脈を心拍数(Heart Rate:HR)からみた場合、HRが100/分以上になる不整脈を頻脈性不整脈といい、その発生機序は、①興奮発生の異常には『異常自動能』と『撃発活動(triggered activity)』が含まれ、②興奮伝播の異常には『リエントリー(興奮旋回)』が含まれる(図)。
ちなみにHRが50/分未満は徐脈性不整脈というが、本稿ではこれには触れず、頻脈性不整脈の発生機序について述べていく。

・異常自動能
洞結節から発生した興奮が房室結節へ伝導され、次にヒス束から右脚・左脚、プルキンエ線維へと伝わり、最終的に心筋が興奮することで心臓が収縮する。
これら洞結節からでた電気的な興奮が心筋まで伝わる過程のことを刺激伝導系という。
この刺激伝導系である特殊心筋は、それぞれが自ら反復して律動的に収縮(興奮)する『(正常)自動能』を持っている。
興奮の頻度は上位の方が早く、下位にいくほど遅くなる特性を有している。そのため、通常は洞結節が歩調とり(ペースメーカー)になり、周期的に心臓を収縮させている。
この自動能が、様々な病態下(例:心筋虚血)で本来ペースメーカーではない心房筋や心室筋細胞から自発興奮が発生することを異常自動能という。
このような状態では、心筋細胞は静止膜電位が浅くなり、カルシウム依存性の活動電位の立ち上がりとなっていることが知られている。
・撃発活動(triggered activity;トリガードアクティビティ)
活動電位の再分極の終了前あるいは終了後に再び振動性の脱分極が起こることを後脱分極という。
この後脱分極が、活動電位発生の閾値に達することで、自発興奮が発生する現象のことを撃発活動(triggered activity)という。
triggered activityには2種類あり、再分極の終了前に起こるものを早期後脱分極(early afterdepolarization;EAD)、再分極の終了後に起こるものを遅延後脱分極(delayed afterdepolarization;DAD)という。
EADは、低カリウム血症や抗不整脈薬、抗癌剤、QT延長症候群などに伴ってみられる。特にQT延長症候群におけるEADは、torsade de pointes(多形性心室頻拍)の発生トリガーとして重要である。
DADは、低カリウム血症や高カルシウム血症、カテコラミン、頻脈、ジギタリス中毒、虚血・再灌流など細胞内カルシウム過負荷をきたす際にみられる。
細胞質および筋小胞体のカルシウムが増加すると,筋小胞体から自発的にカルシウムが放出され、DADが発生するとされる。
・リエントリー
心筋組織内に異常な電気回路が形成され、心臓の興奮が1回だけで消失せず一定の回路内の部位に戻り、再度心筋を興奮させ電気興奮がぐるぐると旋回する現象のことをリエントリーという。
このリエントリーの発生は、①リエントリー回路、②一方向性ブロック、③遅延(緩徐)伝導といった3つの条件が揃うことで起こる。
①リエントリー回路には2種類あり、解剖学的リエントリー(マクロリエントリー)と機能的リエントリー(ミクロリエントリー)に大別することができる。
マクロリエントリーは、解剖学的にリエントリー回路が存在し、その回路内で不整脈が生じるものをいう。
WPW症候群における発作性上室頻拍(PSVT)や陳旧性心筋梗塞に伴う心室頻拍、心房粗動などがマクロリエントリーの代表例である。
ミクロリエントリーは、解剖学的にリエントリー回路が存在せず、伝導速度や不応期の不均一性の増大によってリエントリーが生じ、1拍ごとに変化していく機能的な回路が存在することで不整脈となるものをいう。
ミクロリエントリーのメカニズムは諸説(leading circle説、spiral wave reentry説)あり、細動や持続性頻拍の重要な機序とされる。
投稿者
井上拓也

理学療法士
循環認定理学療法士
心臓リハビリテーション指導士
3学会合同呼吸療法認定士
サルコペニア・フレイル指導士
国家資格キャリアコンサルタント
心電図検定1級
植込み型心臓不整脈デバイス認定士
協会指定管理者(上級)
フレイル対策推進マネジャー
地域ケア会議推進リーダー
介護予防推進リーダー
mysole協会ベーシックマイスター
循環器疾患(心臓リハビリ)や代謝疾患(糖尿病)、透析リハビリ、サルコペニア・フレイルを中心に臨床を行っている。
また、心肺運動負荷試験(CPX)も相当数経験をしており、呼気ガス分析に基づく安全かつ効果のある運動処方を展開するよう常に心がけている。
定期的にセミナー講師も務め、上記の疾患およびそのフィジカルアセスメント、心電図の判読などの情報提供も行っている。
