「リハビリテーション視点」とは?ー通所リハ・通所介護の現場に本当に必要なものー

通所リハビリテーションや通所介護の現場では、「リハビリテーション視点を持って関わってほしい」という言葉が日常的に飛び交う。会議でも、申し送りでも、加算算定の説明でも使われる。

しかし、その言葉の中身を自分の言葉で説明できる人は、どれだけいるだろうか。

「リハビリテーション視点って言うけど……そもそもリハビリテーションとは何ですか?」

この問いに立ち止まれるかどうかが、現場の関わり方を大きく分ける。運動メニューの引き出しを増やす前に、まず確認しておきたい前提である。

リハビリテーションは「機能回復」ではない

リハビリテーションの定義は、医学的・社会的・教育的・職業的手段を組み合わせ、訓練や再訓練によって、障害のある人の機能的能力を可能な最高レベルに到達させること、とされている。

注目すべきは語源である。
「re(再び、戻す)」と「habilis(適した、ふさわしい)」から成り立つ言葉であり、意味するところは単なる機能回復ではない。
「人間らしく生きる権利の回復」であり、「自分らしく生きること」こそが本質である。

目的として掲げられるものも幅広い。
・基本的な動作能力や歩行、日常生活動作などの運動機能・動作能力の回復を図る
・在宅生活への復帰や、仕事・スポーツ活動への復帰を目指す
・社会生活力を高める
・その人自身の全面的な発達と権利を確保する

筋力やROMの改善は、この中の一部分に過ぎない。ここを取り違えると、「20分の個別訓練は頑張っているが、生活は何も変わらない」という状態が生まれる。

生活期リハビリテーションの目標をどう置くか

では、生活期——つまり通所リハ・通所介護が担う領域——における目標は何か。

筆者は次のように整理している(私案)。


「利用者の生活機能の維持・改善を図り、地域社会で、その人らしい自立した生活を継続させること」

この一文には四つの要素が含まれている。

「生活機能の維持・改善」「その人らしい生活」「自立した生活」「生活の継続」である。

そして、それぞれに必要な取り組みがある。

1.「生活機能の維持・改善」の実現に関すること
国際生活機能分類(ICF)による評価、多職種による評価と役割分担。

2.「その人らしい生活」の実現に関すること
利用者の意向(「やりたいこと」など)の聴取、生活行為向上マネジメント、生活時間の評価。

3.「自立した生活」の実現に関すること
ハビリテーション・ケアの目的の明確化、改善した能力の日常生活・社会生活への活用、残存能力の活用、自立支援(パターナリズムの排除)。

4.「生活継続」の実現に関すること
多職種協働、インフォーマルケアの活用、再発・合併症の予防と早期発見、生活機能の再評価(効果検証)とサービス修正、将来を見越したリハビリテーションの検討(予後予測)とケアマネジャーへの提案。

こうして並べてみると、リハビリテーション視点とは特定の技術ではなく、評価の枠組みと関わりの方向性であることが見えてくる。

ICFで「その人の生活」を立体的に捉える

生活機能を捉える共通言語がICFである。

心身機能・構造(生命レベル)、活動(個人レベル)、参加(社会レベル)の三層があり、それらは健康状態と、環境因子・個人因子という背景因子の影響を受ける。

 

現場で起こりがちなのは、「心身機能・構造」だけを見て終わってしまうことだ。

膝の痛みが軽減した、握力が上がったなど、それ自体は成果である。

しかしその変化が「活動」や「参加」につながっていなければ、生活は動かない。

逆に、機能面の改善が乏しくても、環境因子(福祉用具・住環境・人的環境)へのアプローチによって活動と参加が広がる例は少なくない。

どこに介入すれば生活が動くのかを見立てることが評価の役割である。

「できるADL」を「しているADL」に

リハビリテーション視点を最も端的に表すのが、この言葉である。

トイレ動作を例に考えてみたい。

訓練場面では、手すりを使って便座への移乗ができ、ズボンの上げ下ろしも、時間はかかるが自分で行える。

これが「できるADL」である。

ところが実際のフロアでは、職員が先回りして介助してしまう。

「時間がかかるから」「転倒したら危ないから」「他の利用者を待たせるから」など理由はいくらでもある。

そして自宅でも、家族が同じ理由で手を出してしまい、結果として、その能力は生活の中で一度も使われない。

これが「しているADL」との乖離である。

使われない能力は失われ、訓練室で積み上げたものが、フロアと自宅で削られていく構図である。

必要なのは、能力の把握を評価者だけのものにせず、介護職・看護職・家族と共有し、実際の生活場面で発揮される設計に落とし込むことだ。

どの手順は自分で行い、どこから介助が必要なのか。どんな声かけなら動き出せるのか。どの環境設定なら安全に行えるのか。

これは個別訓練の時間ではなく、送迎から入浴、排泄、レクリエーション、そして帰宅後の生活まで、事業所の関わり全体で実現されるものである。

だからこそリハビリ職だけでなく、介護職・機能訓練指導員が同じ視点を共有する意味がある。

投稿者
堀田一希


・理学療法士

理学療法士免許取得後、関西の整形外科リハビリテーションクリニックへ勤務し、その後介護分野でのリハビリテーションに興味を持ち、宮﨑県のデイサービスに転職。現在はデイサービスの管理者をしながら自治体との介護予防事業なども行っている。

「介護施設をアミューズメントパークにする」というビジョンを持って介護と地域の境界線を曖昧に、かつ、効果あるリハビリテーションをいかに楽しく、利用者が能動的に行っていただけるかを考えながら臨床を行っている。

また、転倒予防に関しても興味があり、私自身臨床において身体機能だけでなく、認知機能、精神機能についてもアプローチを行う必要が大いにあると考えている。
そのために他職種との連携を図りながら転倒のリスクを限りなく減らせるよう日々臨床に取り組んでいる。

 

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