2027年度介護報酬改定を読み解く―訪問看護・訪問リハ・通所リハ・通所介護・老健の主要論点

2027年度介護報酬改定に向けた議論が本格化している。

私は今回の改定を考える際、単純に「基本報酬が上がるのか、下がるのか」「どのような加算が新設されるのか」だけを見るべきではないと考えている。

重要なのは、国がそれぞれの介護サービスに何を求めているのかである。

今回の議論を見ると、訪問看護には医療ニーズへの対応、訪問・通所リハには生活機能を意識したリハビリテーション、通所介護には在宅生活の継続支援、介護老人保健施設には医療と介護をつなぐ機能が改めて問われている。

加えて、人材不足、長期利用、加算の複雑化、事務負担など、制度の持続可能性に関する課題も共通している。

2026年6月15日には通所介護・通所リハ、6月29日には訪問看護・訪問リハ、7月9日には介護老人保健施設について社会保障審議会介護給付費分科会で議論された。

現時点では具体的な報酬や算定要件は決定していない。

厚生労働省が示した「現状と課題及び論点」を基に議論している段階である。

訪問看護

訪問看護では、医療ニーズの高い在宅療養者への対応が中心である。

厚生労働省は、緊急時対応や関係機関との連携を充実させ、質の高い訪問看護を効果的・効率的に提供する事業所をどのように評価するかを論点としている。

一方、医療処置を含む24時間の看護サービスよりも、リハビリテーション提供が主体と推察される事業所が一定数あることも示された。

訪問看護ステーションにおける看護機能と理学療法士等による訪問の位置付けは、引き続き重要なテーマである。

人材確保も課題である。

事業所数と利用者数が増える一方、廃止・休止するステーションも増えており、従業員確保の難しさなどが背景にある。

算定率の低い加算の整理も論点である。

訪問リハビリテーション

訪問リハでは、どのようなリハビリテーションを提供し、どのようにマネジメントするのかが問われている。

リハビリテーション計画書では、運動機能の改善を目標とする割合が約70%である。

一方、ADL・IADLの改善を目標とする割合は20~40%である。

また、介護予防訪問リハでは、利用開始24か月後も利用を継続し、修了予定がない利用者が約76%であった。

継続理由には本人・家族の希望や、運動機会・活動量の維持が挙げられている。

厚生労働省の論点は、こうした実施内容やリハビリテーションマネジメントの実態を踏まえ、サービス提供内容をどうするかである。

通所リハビリテーション

通所リハも訪問リハと共通する課題が多い。

請求事業所数は近年減少傾向であり、2024年度決算の収支差率は2.0%である。

リハビリテーション計画書では、運動機能の改善を目標とする割合が約70%、ADL・IADLの改善は20~30%である。

介護予防通所リハでは、利用開始24か月後も修了予定がない利用者が約90%であった。

生活行為向上リハビリテーション実施加算の算定率は1.6%であり、研修修了者の不足やリハビリテーションマネジメント加算の算定の難しさなどが課題として示されている。

今後は、サービス提供体制とリハビリテーションマネジメント、長期利用、算定率の低い加算の整理が焦点である。

通所介護

通所介護では、中重度者や認知症高齢者を含む利用者の在宅生活をどのように支えるかが中心である。

厚生労働省は、生活機能を維持し、自立支援につながる質の高いサービスを提供するための方策を論点としている。

送迎負担も明確に取り上げられた。送迎は事業所職員が担うケースが多く、人員確保、シフト調整、利用時間の多様化が負担となっている。

2024年度決算の収支差率は通所介護6.2%、地域密着型通所介護6.3%である。

算定率が低い加算だけでなく、算定率が高い加算も含め、報酬体系を整理する議論が進んでいる。

介護老人保健施設

介護老人保健施設では、医療と介護の複合ニーズを持つ高齢者への対応が中心である。

2024年度決算の収支差率は0.6%であり、全サービス平均4.7%を下回る。

論点には、医療ニーズへの対応力、看取り、リハビリテーション、薬剤調整、在宅復帰・在宅療養支援機能の強化が明記されている。

高齢者の入院前後を支える施設として、老健の医療対応力をどこまで高めるのか。

在宅復帰機能と医療機能をどのように両立させるのか。

2027年度改定をどう見るか

今回の議論を横断的に見ると、キーワードは「役割の明確化」「質とアウトカム」「自立支援」「医療介護連携」「人材確保」「報酬体系の簡素化」である。

特にリハビリテーション分野では、単に運動や訓練を提供するだけではなく、それがADL・IADL、社会参加、在宅生活にどのようにつながったのかが一層問われる。

ただし、現時点で報酬の増減や新たな加算が決定したわけではない。

今後は、今回示された論点が年末に向けて具体的な基本報酬、加算、減算、算定要件へどのように反映されるのかを追う必要がある。

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筆者
高木綾一

理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
三学会合同呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
国家資格キャリアコンサルタント
株式会社Work Shift代表取締役
関西医療大学 保健医療学部 客員准教授

医療・介護分野の経営戦略や人材育成に精通し、年間100回以上の講演を実施。
医療機関や介護事業所の経営支援を通じて、組織の成長と発展をサポートする。
著書には 「リハビリ職種のキャリア・デザイン」 や 「リハビリ職種のマネジメント」 があり、リハビリ職種のキャリア形成やマネジメントの実践的な知識を提供している。
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