問診で確認すべきこと
肩関節の問診では、疼痛の性質、日常生活動作(ADL)への影響、関節可動域の制限を中心に確認する。
特に、患者の「どのようなときに、どこが、どのように痛むか」という表現には、病態や力学的負荷を考えるための重要な情報が含まれる。
疼痛は大きく、動作時痛、安静時痛、夜間痛、しびれ・重だるさに分けて整理すると把握しやすい。

1)動作時痛
「腕を上げると痛い」
「髪や身体を洗えない」
「高い場所の物が取れない」
「荷物を持つと痛い」
「背中に手を回せない」
「ブラジャーの着脱がつらい」
このような訴えは、肩関節を動かした際に、特定の組織へ力学的な負荷が加わっている可能性を示す。
問診では、単に「痛いか」を聞くだけでは不十分である。
疼痛が出現する上肢の位置、動作方向、負荷の大きさ、動作速度、反復の有無まで具体的に確認する。
たとえば、挙上時の疼痛であれば肩峰下部の組織への負荷、結帯動作での疼痛であれば肩関節内旋・伸展方向の可動性や後方組織の影響などを考える手がかりとなる。
ただし、動作時痛のみから病変部位を断定することはできない。問診所見は、視診、触診、可動域検査、筋力検査などと統合して解釈する必要がある。
2)安静時痛
「何もしていなくても痛い」
「肩から肘にかけてジンジンする」
「夜、横になると痛みが強くなる」
「肩全体が痛く、どこが痛いのかわからない」
安静時痛は、炎症が強い時期にみられやすい所見の一つである。
炎症が強い場合には、特定の方向だけではなく、複数方向の運動で疼痛が生じることがある。また、軽い動きや衣服の接触でも痛みを訴える場合がある。
安静時痛が強い、急速に悪化している、発熱や著しい腫脹を伴う、外傷後から強い痛みが続くといった場合は、自己判断で運動を進めず、速やかに医師へ相談する必要がある。
3)夜間痛
夜間痛は睡眠を妨げやすく、疲労の蓄積、活動量の低下、気分の落ち込みなどを通じて、QOLを大きく低下させる。
夜間痛の原因は一つに限定できず、以下の要因が複合的に関与すると考えられている。
① 仰向けや横向きでの圧迫
就寝姿勢では、上腕骨が下方に牽引される重力の影響が取り除かれるため、肩峰下滑液包や腱板周囲の組織が圧迫され、疼痛が誘発されることがある。特に、腱板障害、肩峰下滑液包炎、拘縮、肩関節周囲の炎症がある場合は、姿勢の影響を受けやすい。
② 寝返りによる疼痛
寝返りの際には肩関節が伸展、内転、外転、回旋などの方向へ動く。拘縮や炎症がある場合、その動きによって疼痛が生じやすい。
③ 就寝中の同一姿勢
長時間同じ姿勢が続くと、関節包、筋、腱などに持続的な圧迫や牽引が加わる。これが朝方の痛みや、夜間の中途覚醒につながる場合がある。
④ 疼痛への注意の高まり
夜間は外部からの刺激が少ないため、日中よりも痛みに注意が向きやすい。痛みそのものの増悪に加え、不安や睡眠不足が痛みの感じ方を強めることもある。
なお、夜間痛を単一の解剖学的・循環学的機序だけで説明することは困難である。症状、姿勢、炎症の程度、可動域制限、心理的要因などを総合的に評価することが重要である。
4)しびれ・重だるさ
「肩から指先までしびれる」
「腕全体が重くて動かしにくい」
「首を動かすと腕まで痛い」
このような訴えがある場合、肩関節そのものの問題だけではなく、頚椎由来の神経症状、胸郭出口症候群、末梢神経障害なども鑑別に挙げる必要がある。
また、明らかな筋力低下、感覚低下、手指の巧緻動作低下、上肢の色調変化や腫脹がある場合は、神経・血管系の問題も考慮する。
肩関節周囲炎と決めつけず、症状の分布と経過を丁寧に確認し、必要に応じて医師と連携しながら評価を進めることが重要である。
投稿者
高木 綾一

株式会社WorkShift 代表取締役
国家資格キャリアコンサルタント
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
呼吸療法認定士
修士(学術/MA・経営管理学/MBA)
関西医療大学保健医療学部 客員准教授
医療・介護分野の現場経験とマネジメントの専門性を活かし、リハビリテーション部門や多職種連携に関するコンサルティングを全国で展開している。
医療機関や介護事業所の立ち上げ支援、教育体制の構築、組織マネジメント支援など、実践的かつ現場に根ざした支援を強みとする。
