- 横隔膜と腹横筋の構造
横隔膜と腹横筋は、呼吸運動や体幹機能を考えるうえで密接に関係する筋です。ただし、両筋が一つの筋として連続しているわけではなく、下位肋軟骨の内面で、それぞれの筋束が鋸歯状に入り組むように構造をしています。
横隔膜肋骨部は、下位6肋骨およびその肋軟骨の内面から起こり、中央腱へ向かって走行します。一方、腹横筋の頭側部も下位肋軟骨の内面から起こり、腹部を横方向に取り囲むように走行します。
両筋は独立した筋でありながら、下位胸郭と腹部の境界で、同じ下位肋軟骨に関係する構造となっています。

2.交錯部には異なる方向の力が作用する
横隔膜と腹横筋では、収縮によって生じる力の方向が異なります。
吸気時に横隔膜が収縮すると、腹腔内圧が上昇し、下部胸郭内面には外方へ向かう圧が加わります。また、横隔膜肋骨部の収縮力は、付着する下位肋骨・肋軟骨にも伝達されます。
一方、腹横筋が収縮すると、腹壁には周方向の張力が生じます。腹囲が縮小し、頭側部の筋張力は肋骨弓や下位肋軟骨にも伝達されます。努力呼気では、この作用が下位胸郭の内方への復帰や横隔膜の頭側移動を補助します。
したがって、横隔膜と腹横筋が交錯する領域は、下部胸郭を外方へ拡張させる力と、内方へ復帰させる力が関係する移行部として理解できます。
3.呼吸相に応じた張力調整が下部胸郭運動を支える
横隔膜と腹横筋の機能的連携は、両筋が常に同時に強く収縮することではありません。呼吸相に応じて、それぞれの活動と張力が調整されることが重要です。
吸気では横隔膜の活動が増加し、中央腱の下降と下部胸郭の拡張が生じます。このとき、腹横筋が下位肋軟骨を内方へ引く張力を強く維持すると、肋骨弓の拡張を制限する可能性があります。そのため、吸気では腹横筋に含まれる呼気性の活動が減弱し、横隔膜下降に伴う腹壁と下部胸郭の変形を許容します。
ただし、吸気時に腹横筋全体が完全に弛緩するわけではありません。立位保持や上肢運動などを伴う場合には、姿勢保持や腹腔内圧の調整に必要な活動が残ります。つまり腹横筋は、横隔膜の運動を妨げない範囲で腹壁の張力を調整していると考えられます。
反対に、努力呼気や咳嗽では腹横筋の活動が増加します。腹囲の縮小と腹腔内圧の上昇によって横隔膜を頭側へ押し上げ、下位肋骨・肋軟骨の内方への復帰を補助します。
横隔膜と腹横筋は、下位肋軟骨内面で交錯し、同じ下部胸郭に異なる方向から作用します。この解剖学的構造を踏まえると、両筋の協調は単純な共同収縮ではなく、吸気では拡張を許容し、呼気では復帰を補助するように張力を調整する関係として捉えることができます。
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投稿者
福山真樹

理学療法士
メディカルアナトミーイラストレーター
鳥取県理学療法士会イラスト担当
日本理学療法士協会推薦公式イラスト担当
京都芸術大学通信教育部イラストレーションコース非常勤講師(美術解剖学_添削採点担当)
イラストスタジオ福之画代表
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