リハビリテーションの現場で、多くの療法士が一度は直面するのが、いわゆる「リハ拒否」です。
特に若手の頃は、「自分の関わり方が悪かったのではないか」「技術が足りないから断られるのでは」と、自信を揺さぶられる経験にもなりがちです。
ただ、在宅や通所の現場で起こる拒否は、単なる気分やわがままではなく、その人の生活や心身の状態が発している“1つのサイン”として捉える必要があるのではないでしょうか?
今回は、明日からの臨床で使える「拒否との向き合い方」を整理してみます。

1.「医学モデル」だけで介入していないか
私たち専門職がつい陥りやすいのが、「麻痺を改善する」「筋力をつける」といった機能回復を最優先に考える視点です。
もちろん重要ですが、在宅・通所リハビリテーションの最終目的は、疾患を治すことそのものではなく、『その人の生活がどう成り立つか・改善するか』にあります。
ICFの枠組みで考えると、拒否は心身機能の問題だけで説明できないことが多くあります。
性格や価値観、その日の体調や気分といった個人因子、家族との関係性やスタッフとの相性といった環境因子が重なり、その結果として「今日はやりたくない」という反応が表れている場合も少なくありません。
「できないこと」にばかり目を向けず、
「できていること」「本当は大事にしたいこと」をきちんと拾えているか。
この視点が、拒否対応の出発点になるようと考えています。
2.良かれと思った声かけが、負担になっていないか
声かけは、私たちリハ専門職にとって欠かせない支援手段です。
一方で、「頑張りましょう」「もう少しですよ」といった励ましが、必ずしも全ての利用者にとってプラスに働くとは限りません。
状態が比較的安定している方にとっては、承認や期待を含んだ言葉が意欲につながることもあります。
しかし、体調や機能低下が進んでいる方にとっては、その言葉が「できない自分」を突きつけられる負担になることもあります。
大切なのは、励ますことよりも、“安心してその場にいられる関係性”をつくることです。
「ゆっくりで大丈夫です」「今日はここまでにしましょうか」といった言葉が、結果的に次の一歩につながることもあります。
3.拒否の背景を、生活の中から探る
拒否の理由は、リハビリ内容そのものではない場合も多くあります。
たとえば、
・急に誘われて心の準備ができていない
・この後の予定が気になって集中できない
・特定のスタッフとの関係に緊張がある
・本人の希望や、興味・関心が十分に考慮されていない
こうした要因は、評価表だけを見ていても分かりません。
ご本人との会話や、ご家族、ケアマネジャー、看護師との情報共有の中で、少しずつ見えてくるものです。
また、本人のニーズや「取り戻したい」と思っている活動・参加が目標として合意形成されており、その達成のために必要な段階付けが共有されていない場合、対象者自身の主体性を引き出すことは難しくなります。
本人が「何のために、これを行っているのか」「このプログラムに取り組むことで、何が変わるのか」「いつまで行えばいいのか」を理解できるような、具体的な説明は重要です。
「なぜ拒否されたのか」を技術の問題に限定させず、生活全体の流れの中で捉えることが、以降の関わりに変化をもたらします。
4.報酬改定が示している方向性を、現場でどう生かすか
2024年度の診療報酬・介護報酬同時改定、そして2026年改定を見据えると、リハビリテーションに求められているのは、『活動や参加をどう支えたか』という視点です。
歩行訓練を拒否されたから終わり、ではなく、
「では、どんな形なら生活につながるか」を考えることが、今の制度の流れとも一致しています。
掃除の一部を担う、家族との役割を調整する、外出のきっかけとなり得る小さな活動の自立を目指す。
こうした生活の中の活動を支援として位置づけていくことは、拒否への対応であると同時に、制度が求めるリハビリテーションのあり方でもあります。
訪問・通所リハにおける拒否対応は、説得やテクニックの問題ではありません。
ICFの視点を用いて生活のしづらさを多角的に捉え、人との関係性や環境を調整していくことそのものが、専門的な支援です。
「今日は無理だった」で終わらせず、
「では、何ならできるだろうか」と考え続ける。
その姿勢が、利用者との関係を少しずつ変え、リハビリテーションの可能性を広げていくのではないでしょうか。
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投稿者
浅田 健吾先生
株式会社colors of life 訪問看護ステーション彩

平成21年に関西医療技術専門学校を卒業し、作業療法士の免許取得する。
回復期・維持期の病院勤務を経て、令和元年より株式会社colors of life 訪問看護ステーション彩での勤務を開始する。
在宅におけるリハビリテーション業務に従事しながら、学会発表や同職種連携についての研究等も積極的に行っている。
大阪府作業療法士会では、地域局 中河内ブロック長や地域包括ケア委員を担当しており、東大阪市PT.OT.ST連絡協議会の理事も務めている。
平成30年からは、大阪府某市における自立支援型地域ケア会議に助言者として参加している。
