股関節前面痛とAIIS脂肪体|大腿直筋起始部と関節包前面から考える評価のポイント

  1. 股関節前面痛を評価する際の注意点

股関節前面痛では、関節唇損傷やFAIが注目されやすいです。

しかし、股関節前面には大腿直筋、腸腰筋、小殿筋、関節包前面などが密集しており、関節外組織や関節包周囲組織も痛みに関与する可能性があります。

股関節痛を評価する際には、関節内病変だけでなく、股関節に近接する筋・腱・関節包・疎性結合組織の位置関係を理解することが重要です。

特に股関節前面では、複数の組織が狭い領域に集まっています。そのため、組織間の滑走性や緊張の変化が、疼痛や運動時の違和感に影響する可能性があります。

  1. AIIS脂肪体の位置と役割

下前腸骨棘周囲には、大腿直筋起始部と股関節包前面の間に、脂肪体・疎性結合組織が存在し、AIIS脂肪体と呼ばれています。

AIIS脂肪体は、主に以下の構造の間に位置します。

・大腿直筋の深層
・股関節包前面の表層
・腸腰筋の表層
・小殿筋の内側

この位置関係から、AIIS脂肪体は大腿直筋、腸腰筋、小殿筋、関節包前面が密集する股関節前面において、組織間の滑走性を保つ滑走・緩衝層として働きます。

  1. 線維化・癒着が生じた場合の臨床的問題

股関節前面痛を有する場合、大腿直筋直頭起始部の腱障害、AIIS脂肪体の線維化、筋と関節包の癒着が報告されています。

そのため、股関節前面痛を関節唇損傷やFAIだけで説明するのではなく、大腿直筋起始部、AIIS脂肪体、関節包前面周囲の滑走障害も評価対象に含める必要があります。

AIIS脂肪体や周囲の疎性結合組織が線維化すると、大腿直筋起始部と関節包前面の間の滑走性が低下します。

その結果、股関節前面部の痛みや運動時の違和感に関与する可能性があります。

  1. 股関節前面痛の評価でおさえるべきポイント

AIIS脂肪体は、FABER肢位において股関節前面の関節包や周囲筋とともに動的に形態変化する可能性が報告されています。

そのため、FABERで股関節前面痛が出る場合には、関節唇損傷、FAI、腸腰筋、大腿直筋起始部、関節包前面だけでなく、AIIS脂肪体の線維化や滑走障害も鑑別候補に入れることが重要です。

臨床では、疼痛誘発肢位、圧痛部位、股関節前面の組織緊張、腸腰筋や大腿直筋の伸張ストレスなどを確認しながら、関節包前面周囲の滑走性を総合的に捉える必要があります。

  1. まとめ

AIIS脂肪体は、大腿直筋起始部と関節包前面の間で滑走・緩衝に関与する組織です。

股関節前面痛を評価する際には、関節内病変だけでなく、AIIS脂肪体を含む関節包周囲の局所解剖にも目を向けることが重要です。

 

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投稿者
福山真樹

理学療法士
メディカルアナトミーイラストレーター
鳥取県理学療法士会イラスト担当
日本理学療法士協会推薦公式イラスト担当
京都芸術大学通信教育部イラストレーションコース非常勤講師(美術解剖学_添削採点担当)
イラストスタジオ福之画代表
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