疼痛に対する薬物療法を考える際、理学療法士が理解しておきたい代表的な薬剤がNSAIDsである。
NSAIDsとは、非ステロイド性抗炎症薬のことであり、炎症に伴う痛み、腫脹、熱感などを軽減する目的で使用される。
疼痛が強い時期には、痛みによって関節運動や荷重動作が制限され、理学療法そのものが進みにくくなる。
そのためNSAIDsは、単に痛みを消す薬ではなく、「理学療法を進めるための入口を作る薬」と捉えることが重要である。
ただし、NSAIDsで痛みが軽減したことを、問題が解決したと判断してはならない。
薬によって炎症や痛みが一時的に抑えられても、関節可動域制限、筋力低下、不良姿勢、歩行パターン、過負荷動作が残っていれば、薬の効果が切れた後に再び痛みが出現する。
理学療法では、薬で痛みが下がった後こそ、どの動作で痛みが再現されるのか、どの負荷量なら許容できるのかを丁寧に評価する必要がある(図1)。
図1 NSAIDsと理学療法の関係
評価では、安静時痛と運動時痛を分けて確認することが基本である。
さらに、NRSなどの痛みの強さだけでなく、腫脹、熱感、圧痛、可動域、筋力、荷重時痛、歩行距離、階段昇降、立ち上がり動作などを合わせて評価する。
NSAIDs内服後に痛みが軽減し、動作量が増えたのか。それとも痛みだけが下がり、機能は変わっていないのか。
この違いを見極めることが重要である。
また、NSAIDsには消化管障害、腎機能への影響、心血管リスクなどの注意点がある。
したがって、疼痛対応における理学療法士の役割は、NSAIDsの効果を否定することではない。
薬で痛みを抑え、理学療法で動作と生活機能を改善することである。
NSAIDsは痛みを下げる手段、理学療法は痛みを繰り返さない身体と生活を再構築する手段である。
この両者を分けて考えず、評価を通じて適切に接続することが、疼痛リハビリテーションの質を高めるのである。
投稿者
高木 綾一

株式会社WorkShift 代表取締役
国家資格キャリアコンサルタント
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
呼吸療法認定士
修士(学術/MA・経営管理学/MBA)
関西医療大学保健医療学部 客員准教授
医療・介護分野の現場経験とマネジメントの専門性を活かし、リハビリテーション部門や多職種連携に関するコンサルティングを全国で展開している。
医療機関や介護事業所の立ち上げ支援、教育体制の構築、組織マネジメント支援など、実践的かつ現場に根ざした支援を強みとする。
