令和8年度診療報酬改定 疑義解釈資料その5を読む リハビリ部門に影響する排尿自立支援・実施計画書・嚥下調整食の論点

回復期リハビリテーション病棟における
排尿自立支援の重要性

今回の疑義解釈では、回復期リハビリテーション強化体制加算の施設基準として、排尿自立支援加算の届出が要件となったことに関連し、排尿自立支援加算に必要な研修について具体的な整理が示された。

該当する研修として、全日本病院協会の「下部尿路機能障害の治療とケア研修会」、東京都立病院機構東京総合診療推進プロジェクトの「排尿機能回復に向けた治療とケア講座」、日本リハビリテーション病院・施設協会の「下部尿路機能障害の排尿ケア講座」、回復期リハビリテーション病棟協会の「排尿自立支援加算 研修会」などが挙げられている。

これは、回復期リハビリテーションにおいて、排尿機能への支援がADL改善や在宅復帰支援の重要な要素として位置づけられていることを示している。排尿の自立は、単なる排泄動作の問題ではない。移動能力、トイレ動作、認知機能、生活リズム、介助量、退院後の家族負担に直結する課題である。

したがって、回復期リハビリテーション病棟では、排尿自立支援を看護師だけの役割として捉えるのではなく、医師、看護師、理学療法士、作業療法士、介護職、MSW等が連携して取り組むべき課題である。特にPT・OTは、トイレ動作、移乗、歩行、下衣操作、環境調整といった視点から排尿自立支援に関与する必要がある。

リハビリテーション実施計画書等の
署名不要化と電子保存

次に重要なのが、リハビリテーション実施計画書等の取扱いである。今回の疑義解釈では、署名が不要とされている書類について、電磁的方法により診療情報の記録・保存を行っている場合には、患者等に交付したものと同じ内容の文書が電子媒体で保存され、その文書を用いて説明を行った日および説明者が記載されていればよいと示された。

これはリハビリテーション部門にとって、実務上の影響が大きい内容である。これまでリハビリテーション実施計画書は、説明、署名、保管、写しの管理など、現場にとって事務負担の大きい業務であった。今回の整理により、電子カルテ等で適切に文書保存がされ、説明日と説明者が明確に記録されていれば、紙の署名管理に過度に依存しない運用が可能となる。

ただし、注意すべき点は「署名が不要になった」ことと「説明が不要になった」ことは全く異なるという点である。リハビリテーション実施計画書は、患者・家族とリハビリテーションの目標、内容、期間、リスク、到達目標を共有するための重要な文書である。署名の有無に関わらず、説明の質と記録の正確性は引き続き求められる。

嚥下調整食と摂食嚥下リハビリテーション

リハビリテーション領域としてもう一つ注目すべき項目が、入院時食事療養等に係る特別食加算、特に嚥下調整食に関する内容である。今回の疑義解釈では、嚥下調整食に関する専門的な知識・技術を有する管理栄養士を養成する10時間以上の研修として、日本栄養士会が主催する研修会、日本健康・栄養システム学会が主催する研修が該当すると示された。

また、摂食嚥下リハビリテーション栄養専門管理栄養士に係る研修や、嚥下調整食のテクスチャー、調理方法、実食、施設で提供している嚥下調整食の振り返り等を含む研修要件についても整理されている。

嚥下調整食は、単に「食べやすい食事」を提供するものではない。誤嚥予防、低栄養予防、食事摂取量の確保、QOLの維持に関わる重要な医療・ケアの一部である。言語聴覚士、管理栄養士、看護師、介護職、医師が連携し、患者の嚥下機能、栄養状態、姿勢、食事環境を総合的に評価することが求められる。

特に生活期や在宅復帰を見据えたリハビリテーションでは、病院内で安全に食べられるだけでは不十分である。退院後に家族や介護職が再現できる食形態であるか、食事姿勢は安定しているか、食事介助の方法は共有されているかまで考える必要がある。

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筆者
高木綾一

理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
三学会合同呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
国家資格キャリアコンサルタント
株式会社Work Shift代表取締役
関西医療大学 保健医療学部 客員准教授

医療・介護分野の経営戦略や人材育成に精通し、年間100回以上の講演を実施。
医療機関や介護事業所の経営支援を通じて、組織の成長と発展をサポートする。
著書には 「リハビリ職種のキャリア・デザイン」 や 「リハビリ職種のマネジメント」 があり、リハビリ職種のキャリア形成やマネジメントの実践的な知識を提供している。
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