軽度者のリハビリテーションの課題

健康寿命の延伸により、要支援者をはじめとする軽度の高齢者は今後さらに増加していくと考えられる。

医療技術やリハビリテーションの進歩によって重症化を防ぎ、できるだけ自立した生活を維持できるようになってきたことは望ましい。

一方で、軽度者は見た目には元気に見えることも多く、支援の必要性が見えにくいため、対応が遅れやすいという課題がある。

現在は、フレイルやロコモティブシンドロームなど、軽度の機能低下を早期に捉え、運動・口腔・栄養・社会参加を含めて包括的に支援することが求められている。

しかし、軽度者への支援には特有の難しさがある。軽度者のリハビリテーションにおける課題について、以下に解説する。

1)生活機能の維持・向上への意識の低さ
軽度者はADLレベルが比較的高く、持病も大きく悪化していないことが多いため、自分の身体機能の低下に気づきにくい。

そのため、病識や危機感が乏しく、リハビリテーションの必要性を感じにくい。

本人にとっては「まだ大丈夫」という認識が強く、支援の開始が遅れやすいことが課題である。

2)継続的な取り組みが難しい
リハビリテーションの必要性を十分に理解できていないため、運動、口腔ケア、栄養改善などの取り組みを習慣化することが難しい。

高齢者は、これまでの生活習慣や価値観を大切にしていることが多く、新しい行動を生活の中に取り入れることに抵抗を感じやすい。

そのため、単に方法を指導するだけでなく、本人の思いや生活背景を踏まえながら、無理なく続けられる形で支援することが重要である。

3)社会参加や活動機会の減少
高齢になると、退職や家族構成の変化、地域とのつながりの希薄化などにより、社会との関わりが少なくなりやすい。

活動量が低下すると筋力や持久力が落ち、フレイルの進行につながる1)

特に外出機会の減少は、身体機能だけでなく意欲の低下も招くため注意が必要である。

そのため、リハビリテーションでは身体機能の改善だけでなく、地域活動や役割づくりなど、社会参加を促す視点が重要となる。

4)転倒・骨折による悪化のリスク
軽度者は一見すると自立した生活を送れているように見えるが、実際にはバランス能力の低下、下肢筋力の低下、反応速度の遅れなどを抱えている場合が少なくない。

そのため、わずかな段差や不注意をきっかけに転倒しやすい。

転倒による骨折は、その後の活動量低下や閉じこもりを招き、一気に要介護状態へ進行する大きな要因となる。

したがって、軽度者へのリハビリテーションでは、転倒予防を重視し、早い段階から生活環境や移動能力にも目を向けた支援が必要である。

●参考文献
1)Makizako H, Shimada H, Doi T, et al. Social Frailty Leads to the Development of Physical Frailty among Physically Non-Frail Adults: A Four-Year Follow-Up Longitudinal Cohort Study. Int J Environ Res Public Health. 2018;15(3):490. doi:10.3390/ijerph15030490.

投稿者
高木 綾一

株式会社WorkShift 代表取締役
国家資格キャリアコンサルタント
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
呼吸療法認定士
修士(学術/MA・経営管理学/MBA)
関西医療大学保健医療学部 客員准教授

医療・介護分野の現場経験とマネジメントの専門性を活かし、リハビリテーション部門や多職種連携に関するコンサルティングを全国で展開している。

医療機関や介護事業所の立ち上げ支援、教育体制の構築、組織マネジメント支援など、実践的かつ現場に根ざした支援を強みとする。

セミナー講師としても多数登壇し、現場の課題解決につながる知見の共有を行っている。

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