企業や組織において「No1だけでは仕事が回らない」という現象は、多くの現場で見られる。
カリスマ的なリーダーやトッププレイヤーがすべてを支配する組織は、一見効率的に見えるが、実際には極めて脆弱である。
なぜなら、組織の成果は「属人的な力」ではなく、「再現性のある仕組み」によって支えられるからである。
経営学の古典であるドラッカーも「組織の成果は、個人の天才ではなく、組織能力によって決まる」と述べている。
つまり、優秀なNo1がいるだけでは成長は持続しない。
No1が抜けた途端に業績が崩れるようでは、真の経営とは言えない。
組織が進化するためには、No2の存在を意識的に育成しなければならないのである。
No2とは単なる「補佐役」ではなく、リーダーの意図を理解し、現場に翻訳して実装できる存在である。
経営理論でいえば「戦略と実行のブリッジ」であり、マネジメントサイクル(PDCA)の実行段階を担う人材である。
No1がビジョンを描き、No2が現実的な戦術へ落とし込む。この構造が機能することで、組織は初めて自律的に動き出す。
また、No2を育てることは「権限委譲のデザイン」でもある。
経営者がすべてを握る組織では、意思決定が遅く、現場の主体性が失われる。
No2に判断権を渡し、成果責任を共有することで、組織全体のスピードと柔軟性が高まる。
結果として、No1は次の成長戦略に集中できる環境を得る。
経営とは、常に次の世代へバトンを渡す営みである。
No2の育成は、組織の「持続可能性」を担保する最重要経営課題であり、それを怠ると企業は一代限りで終わる。
今こそ、No1が輝くだけでなく、No2が育つ仕組みを創ることが、真のリーダーシップである。
筆者
高木綾一

理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
三学会合同呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
国家資格キャリアコンサルタント
株式会社Work Shift代表取締役
関西医療大学 保健医療学部 客員准教授
医療・介護分野の経営戦略や人材育成に精通し、年間100回以上の講演を実施。
医療機関や介護事業所の経営支援を通じて、組織の成長と発展をサポートする。
著書には 「リハビリ職種のキャリア・デザイン」 や 「リハビリ職種のマネジメント」 があり、リハビリ職種のキャリア形成やマネジメントの実践的な知識を提供している。
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