CRT(cardiac resynchronization therapy)は心臓再同期療法のことであり、心臓における同期不全を是正し、心不全患者の心機能を改善させる心臓デバイスである。
同期不全とは、心臓の刺激伝導系において心室内伝導障害が起こると、左脚ブロックに代表されるような右室や心室中隔が先に興奮を始め、左室の興奮が遅れることによって生じるもので、これをdyssynchronyという(正常であれば、右室・左室は同期しており、ほぼ同時に興奮する)。
このような同期不全が起こることにより、心臓の収縮能が低下し、心拍出量も低下する。
興奮の遅延は僧帽弁の開閉にも影響を与え、僧帽弁逆流も生じやすくなり、さらに心拍出量は低下する。
CRTは右房から右室をペーシングし、右室と左室を同時にペーシングする(再同期する)ことにより、同期不全を改善する。
同期不全が改善されることにより、心拍出量や心筋収縮力、僧帽弁逆流などが改善される。
すなわち、結果的に心不全を改善することになる。
ちなみにCRTに除細動機能のあるものをCRT-D、除細動機能のないものをCRT-P(両心室ペースメーカともいう)という。
CRTの推奨クラスⅠは以下のようにされている(https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2018/07/JCS2018_kurita_nogami.pdf)。
■NYHAⅢ~Ⅳの患者で、①最適な薬物療法、②LVEF≦35%、③QRS幅≧120msecの左脚ブロック、④洞調律のすべてを満たす場合
■NYHAⅡの患者で、①最適な薬物療法、②LVEF≦30%、③QRS幅≧150msecの左脚ブロック、④洞調律のすべてを満たす場合
しかし、CRTを導入したとしても心不全症状の改善がみられない症例も存在する。
そのような症例のことをノンレスポンダーという。
逆に、上記した機序により心不全症状が改善した症例をレスポンダーという。
ノンレスポンダーは、CRT導入において30~40%といわれている。
そのノンレスポンダーの原因としては、①ペーシングが最適化されていない、②最適な薬物療法が実施されていない、③不整脈、④貧血、⑤一過性の同期不全、⑥左室リードの位置、⑦ペーシング率の低下、⑧QRS幅が狭い左脚ブロックなどが挙げられる。
投稿者
井上拓也

理学療法士
循環認定理学療法士
心臓リハビリテーション指導士
3学会合同呼吸療法認定士
サルコペニア・フレイル指導士
国家資格キャリアコンサルタント
心電図検定1級
協会指定管理者(上級)
フレイル対策推進マネジャー
地域ケア会議推進リーダー
介護予防推進リーダー
mysole協会ベーシックマイスター
循環器疾患(心臓リハビリ)や代謝疾患(糖尿病)、透析リハビリ、サルコペニア・フレイルを中心に臨床を行っている。
また、心肺運動負荷試験(CPX)も相当数経験をしており、呼気ガス分析に基づく安全かつ効果のある運動処方を展開するよう常に心がけている。
定期的にセミナー講師も務め、上記の疾患およびそのフィジカルアセスメント、心電図の判読などの情報提供も行っている。
